コラム

2024年問題⑦_医師の時間外労働の上限規則

医師は、他職種と比較しても突出した長時間労働の実態にあります。過去の厚生労働省による医師の勤務実態に関する調査では令和4年時点で時間外労働が年 960時間以上が約2割であり、依然として長時間労働の実態が認められ、医師の働き方にある長時間労働の文化を変えていくことが望まれています。

 

医師の時間外労働

             ※医師の働き方改革に関する検討会報告書資料「医師の勤務実態について」

 

2024年4月以降、労働基準法の法改正に伴い、医師の時間外労働の上限規則が適用されることとなりました。すでに一般の業種については、長時間労働を防ぐために時間外労働の上限規則が適用されていましたが、医師については20243月までその適用が猶予されていました。医師の時間外労働の上限規則については医療機関の機能や医師の特性を考慮して、医師の水準により異なる規制が適用されているため、詳しく見ていきましょう。

対象となる医師

時間外労働の上限規制は特定医師に適用されます。特定医師とは、病院もしくは診療所で勤務する医師のことをさします。

時間外労働の上限規制の分類

医師の時間外労働の上限規制の適用に際しては、医師を3つの水準に分類し、それぞれの水準ごとに異なる規制を適用します。水準には、原則であるA水準のほか、B水準・C水準の特例水準があります。

また、医師の時間外労働の上限は原則としてA水準の月100時間未満、年960時間以内の時間外労働を適用しており、やむをえない事情により年960時間を超えて時間外・休日労働を行うこととなる場合、BC水準が適用されます。

医療機関に適用される水準

長時間労働が必要な理由

時間外・休日労働時間の上限(個人単位)

 A水準(原則)

 原則(指定取得は不要)

 月100時間未満/960時間

 連携B水準(医師派遣など)

 他院と兼業する医師の労働時間を

 通算すると長時間労働となるため

 月100時間未満/1,860時間
(事業場単位で年960時間

 B水準(緊急医療など)

 地域医療の確保のため

 月100時間未満/1,860時間

 C-1水準(臨床・専門研修)

 臨床・専門研修医の研修のため

 月100時間未満/1,860時間

 C-2水準(高度医療習得研修)

 長時間の修練が必要な技能習得のため

 月100時間未満/1,860時間

 

特例水準について

医師の時間外労働の上限規制の適用に際しては、原則年間の時間外・休日労働時間が960時間までとなっていますが、960時間を超える医師が勤務する医療機関は「医師労働時間短縮計画案」を作成し、医療機関ごとに評価センターの評価を受け、都道府県知事により以下の特例水準の指定を受ける必要があります。なお、B 水準については2035年度末を目標に終了することとしています。

・連携B水準:

医師の派遣を通じて、地域の医療提供体制の確保に必要な役割を担う医療機関。自院の上限は年960時間だが、副業・兼業先での労働時間を通算して上限を年1,860時間とする。

・B水準

緊急医療など緊急性の高い医療を提供する医療機関や在宅医療で積極的役割を担う医療機関。

・C水準

短期間に集中的な症例を経験する必要がある医師に設けられた水準。初期研修医や専門医資格を目指す専門医、臨床従事期間が6年目以降で特定の高度技能習得のため、長時間の修練が必要な医師を対象としている。

時間外労働が月の上限を超える場合に必要な対応

全水準について、月の上限100時間以上の時間外・休日労働となる場合は以下の通り「面接指導」「就業上の措置」を実施することが義務付けられています。また、B 水準およびC水準においては加えて「追加的健康確保措置」の実施が義務付けられています。

 

・面接指導

 長時間労働の医師の健康状態を確認し、必要に応じ就業上の措置を講じるために行う。時間外・休日労働時間が月100時間以上となると見込まれる医師に対して面接指導を実施する義務がある。管理者は該当医師の睡眠、疲労の状況を確認し、一定以上の疲労の蓄積が確認されたものについては、時間外・休日労働が月100時間以上となる前に面接指導を行うことが可能である。

参考:厚生労働省「面接指導の進め方クイックガイド」

・就業上の措置

 産業医と連携を図りながら、労働時間の短縮や宿直回数の減少などの措置を実施する。

・追加的健康確保措置

 ①連続勤務時間の制限:連続勤務時間を28時間までに制限する。

 ②勤務間インターバル:始業から24時間以内に9時間の連続した休憩時間を確保する。

 ③代償休息:連続勤務時間の制限および勤務間インターバルの実施がやむを得ずできなかった場合、代わりに休息をとることで疲労回復を図る。

参考:厚生労働省「長時間労働医師への健康確保措置に関するマニュアル」

 

今回のコラムでは医師の時間外労働の上限規則について詳細を解説しました。長時間労働を行う医師への就業上の措置や健康確保措置を行うにあたって、事業外資源を活用することも有効です。

弊法人では、職場における従業員の安全と健康を確保するために、従業員の長時間労働による健康障害防止に向けた「安全衛生管理体制の構築支援」の支援も行っておりますので、ぜひご活用ください。

健康管理 - 社会保険労務士法人 プラットワークス - 東京都千代田区・大阪市北区の社労士法人 (platworks.jp)

また、弊法人では、「社会保険労務士」と「臨床心理士(公認心理師)」の協同で支援を行う、日本唯一の企業向けオンラインカウンセリングサービスPlattalksを運営しております。職場における心身の健康に不安を感じている従業員にとって、相談することで心の負担を軽くするプラットフォームとして活用いただくことができます。

Plattalksではカウンセラーによる従業員のメンタルヘルスケアを行うだけでなく、相談者の希望に応じて社会保険労務士との連携、相談対応も行っており、働きやすい体制構築に活用することができます。

Plattalks - 社会保険労務士法人 プラットワークス - 東京都千代田区・大阪市北区の社労士法人 (platworks.jp)

 

前へ
コラム一覧へ戻る
次へ