【2026年最新】健康経営優良法人とは?~メリット・評価基準から取得手順まで解説~

近年の労働環境では、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少により、深刻な人手不足が課題となっています。このような社会的背景のなか、企業が持続的に成長していくための施策として「健康経営」が注目されています。
「健康経営」では、従業員の健康管理を単なる福利厚生ではなく、「経営戦略の一環」として実践することは、従業員の健康状態の改善にとどまらず、組織の活性化と生産性向上、ひいては業績向上につながると期待されています。
そして、この「健康経営」に優れた取り組みを行う企業を国が認定し、社会的に「見える化」した制度が「健康経営優良法人」です。
本コラムでは健康経営が注目されるようになった背景をはじめ、健康経営優良法人の概要、取得するメリット、具体的な申請手順までわかりやすく解説します。

健康経営が注目される歴史的背景

健康経営の起源は、1990年にアメリカの臨床心理学者ロバート・H・ローゼン氏が提唱した「ヘルシー・カンパニー思想」に端を発します。
当時のアメリカでは、従業員の医療費高騰が企業経営を大きく圧迫していました。そのため、病気になってから医療費を払う「疾病モデル」から、予防的健康管理を人的資本への投資とする「生産モデル」への転換が図られました。従業員の健康促進を投資と捉え、積極的に取り組むことで生産性向上につなげるという考え方が生まれたのです。
日本において健康経営が本格的に導入されたのは、2006年のNPO法人健康経営研究会の設立がきっかけです。アメリカの「健康経営」の概念を日本企業向けに適合させ、従来は分断して考えられていた「従業員の健康管理」と「安定した企業経営」の両立を目指す取り組みが始まりました。
その後、2013年に政府が「日本再興戦略」を発表したことで、健康経営は国策として推進されることになります。2014年に「健康経営銘柄」、2016年に「健康経営優良法人認定制度」が創設され、経済産業省と東京証券取引所などが連携して「健康経営」に優れた企業を評価・公表する仕組みが整備されました。

健康経営優良法人とは

「健康経営優良法人」とは、従業員の健康管理やメンタルヘルス対策、働きやすい環境整備など、健康経営において特に優れた取り組みを行っている法人を評価・認定する制度です。経済産業省が制度設計し、民間組織である「日本健康会議」が認定を行っています。

※健康経営とは
従業員等の健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること。従業員の健康保持・増進に取り組むことで組織の活性化や生産性向上、企業価値向上の効果が期待されます(経済産業省ホームページより)

健康経営優良法人は企業の規模や区分に応じて「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」の2部門に分けられます。「健康経営優良法人2026」では、大規模法人部門で3,765法人、中小規模法人で23,085法人が認定されました。なお、各部門の上位500法人には「ホワイト500」、「ブライト500」をはじめとする特別な上位称号が付与されます。

部門

対象

特徴・上位称号

大規模法人部門

・大企業
・一定規模以上の医療法人

上位500法人には「ホワイト500」が付与

中小規模法人部門

・中小企業
・小規模事業者

上位500法人には「ブライト500」が付与
上位501~1500法人には「ネクストブライト1000」が付与

※各認定のロゴマークについては経済産業省のホームページをご参照ください。

評価基準

健康経営優良法人は、以下の5軸に基づき総合的に審査されます。企業規模に応じて評価項目の詳細は異なります。
(※詳細は大規模法人部門認定要件、中小規模法人部門認定要件を参照)

1.経営理念・方針

まず、最初に問われるのは「経営者が従業員の健康管理に対して本気かどうか」ということです。経営者が従業員の健康管理に対して積極的に関与していることが「行動として見える形」となっているかが重要です。具体的には社内外で経営トップが健康宣言や方針を公表します。大規模法人では健康宣言に加えて、経営課題との連動が評価されます。

※健康宣言とは?
企業のトップが「従業員の健康保持・増進に会社として積極的に取り組むこと」を社内外に表明する仕組みです。企業単独で宣言を公表する場合もありますが、多くは全国健康保険協会(協会けんぽ)や各健康保険組合、自治体などが実施している「健康宣言事業」に参加する形で行われます。具体的には企業のトップの意欲表明とともに、「健診受診の徹底」や「ストレスチェックメンタルヘルスケア推進」、「食生活の改善」、」「ワークライフバランスの推進」などの取り組み項目を定量的な宣言項目として宣言書に記載し、所属する保険者(協会けんぽ等)へ提出します。

2.組織体制

健康管理担当者の他、産業医・保健師との連携が求められます。さらに大規模法人では、健康管理責任者の配置(役員以上)や従業員への健康経営の理解促進体制づくりなど、より高度な連携体制と推進組織の構築が求められます。

3.制度・施策の実行

検診受診率向上、禁煙・運動推進、メンタルヘルスケア、女性の健康保持に向けた取り組み、過重労働対策などが求められ、必須項目である健康経営の具体的な推進計画と受動喫煙対策に関する取り組みを除く項目については選択項目として、法人の規模により、要件となる項目数が異なります。

1)従業員の健康課題の把握と必要対策の検討
…健康課題に基づいた具体的な目標設定をはじめ、健診受診率実質100%、健診受診勧奨の取り組み、ストレスチェック実施等が該当します。
2)健康経営実践に向けた土台づくり
…管理職・従業員向けの教育機会の実施の他、ワークライフバランスの実現、育児・介護との両立支援、私病に関する復職・両立支援、女性の健康保持・増進に向けた取組、高年齢者の健康や体力に応じた取り組み等があげられます。
3)従業員の心と身体の健康づくりに関する具体的対策 
…食生活改善、運動機会の増進に向けた取り組み、心の健康保持・増進に関する取組、長時間労働の予防と事後対応などがあげられます。
なお、心の健康保持・増進に関する取り組みとして、弊法人の心理カウンセリングサービスPlaTTalksは外部のメンタルヘルス相談窓口として活用することができます。

4.評価・改善

健康経営の上記取り組みの効果検証や課題分析を行い、次年度に向けた改善を実施します(PDCAサイクルの回旋)。

5.法令遵守・リスクマネジメント(自主申告)

定期健診実施とストレスチェック実施等の労働安全衛生法や労働基準法などの各種法令を遵守していることと、法令違反により送検されていない等があげられます。

評価項目

大規模法人部門

中小規模法人部門

評価・審査方法

「健康経営度調査」へ回答

「認定申請書」提出

前提・必須条件

必須12項目すべてクリア

必須7項目すべてクリア

選択要件

全17項目中14項目以上達成

全17項目中8項目以上達成

1. 経営理念・方針(必須)

・社内外の健康宣言の公表
・従業員パフォーマンス指標、測定方法開示
・他社からの派遣社員や家族への健康支援

・社内外の健康宣言の公表


2.組織体制(必須)

・健康づくり責任者が役員以上
・健康経営推進に関する経営レベルの会議での議題、決定
・産業医、保健師の関与
・保険者との協議、連携
・従業員への健康経営理解促進

・健康づくり担当者(責任者)設置
・求めに応じた40歳以上従業員の健診データ提供



3.制度・施策実行(選択要件)

*以下のうち選択項目から14項目以上
1)従業員の健康課題把握と対策検討
・健康経営の具体的計画(必須)
・健診受診率実質100%
・受診勧奨の取組
・50人未満の事業場におけるストレスチェック実施

2)健康経営実践の土台づくり
・管理職や従業員に対する教育機会
・ワークライフバランスの実現と仕事と育児・介護の両立支援の取組
・コミュニケーション促進に向けた取組
・私病に関する復職、両立支援の取組
・女性の健康保持、増進に関する取組
・高齢従業員の健康や体力に応じた取組

3)心と身体の健康づくりに関する施策
・保健指導実施または指導実施提供機会に関する取組
・食生活改善に向けた取組
・運動機会増進に関する取組
・長時間労働の予防と事後対応
・心の健康保持、増進に関する取組
・感染症予防に関する取組
・喫煙率低下に向けた取組
・受動喫煙対策(必須)

*以下のうち選択項目から8項目以上
1)従業員の健康課題把握と対策検討(2項目以上)
・健康経営の具体的計画(必須)
・健診受診率実質100%
・受診勧奨の取組
・50人未満の事業場におけるストレスチェック実施

2)健康経営実践の土台づくり(2項目以上)
・管理職や従業員に対する教育機会
・ワークライフバランス実現に向けた取組
・仕事と育児・介護の両立支援の取組
・コミュニケーション促進に向けた取組
・私病に関する復職、両立支援の取組
・女性の健康保持、増進に関する取組
・高齢従業員の健康や体力に応じた取組 

3)心と身体の健康づくりに関する施策(4項目以上)
・保健指導実施または指導実施提供機会に関する取組
・食生活改善に向けた取組
・運動機会増進に関する取組
・長時間労働の予防と事後対応
・心の健康保持、増進に関する取組
・感染症予防に関する取組
・喫煙率低下に向けた取り組み
・受動喫煙対策(必須)

4.評価・改善(必須)

・健康経営実施について評価検証

・健康経営実施について評価検証

5.法令遵守(必須)

・各種労働法規の遵守と重大な法令違反、送検がない

・各種労働法規の遵守と重大な法令違反、送検がない

「健康経営優良法人認定」取得のメリット

「健康経営優良法人」の認定を受けることで、採用力の強化や従業員の定着率向上はもちろん、企業イメージや社会的な信用力の向上につながります。ESG投資やSDGsの観点からも評価されるため、投資家へのアピールにも有効です。さらに、金融機関による融資金利の優遇や自治体・官公庁の公共入札における加点評価など、実質的な営業・財務上のメリットも存在します。
一方で、認定申請にあたっては申請手数料や、各種プログラム・ツールの導入に伴うコストや運用工数がかかる点には留意が必要です。 

健康経営優良法人取得の手順

認定取得に向けたプロセスは、1)事前準備 ⇒ 2)申請 ⇒ 3)審査・認定の3ステップで進められます。

1)部門要件の確認と事前準備

経済産業省が定める評価基準を満たすため、社内体制の整備や各種施策の実行・記録を行います。(部門区分の確認については部門の申請区分判定基準を参照)

・中小規模法人部門:加入している保険者の「健康宣言事業」への参加が必須となります。さらに「認定申請書」に項目ごとに提示された取り組みから一定数以上を選択して自社の取り組み状況を記入します。
・大規模法人部門:「健康経営度調査」へ回答し、「認定申請書」を作成します。産業医や衛生委員会との連携など、より戦略的かつ体系的な体制構築が求められています。

2)申請手続き

例年8月~10月頃に申請受付が行われます。公式ポータルサイト「ACTION!健康経営」より申請書をアップロードし、審査料を納付します。

3)審査・認定

提出後、日本健康会議および事務局による書類審査と確認作業が行われ、翌年3月頃に公式ポータルサイト上にて認定法人が公表されます。

おわりに

本コラムでは、健康経営優良法人制度の概要と成立の背景、取得のメリットや申請の流れについて解説しました。
深刻な人手不足が続く現代において、「健康経営優良法人」の認定取得は「働きやすい環境が整っている企業」であることを客観的に証明する強力な武器となります。自社ホームページや求人票のアピール以上に、第三者からの評価が得られるため、求職者・取引先・投資家から選ばれる企業づくりに大きく寄与します。
また、認定に向けた環境整備そのものが、現職の従業員の健康維持やエンゲージメント向上につながり、離職率低下や生産性向上、ひいては持続的な業績拡大という大きなメリットがあります。

プラットワークスでは、「健康経営優良法人認定」をはじめとする、各種企業認定制度の取得計画から申請までのすべての過程を伴走支援するコンサルティングを行っております。
また、認定要件の一つである心と身体の健康づくりに関する施策の一環として、オンラインカウンセリングサービス「PlaTTalks」の活用も有効です。
プラットワークスでは、社会保険労務士による適法かつ柔軟な労働環境の制度設計と、オンライン心理カウンセリング「PlaTTalks」を通じた予防的なメンタルヘルスケアを融合させ、全世代の従業員が安心して持続的に活躍できる「自律型組織」の構築を支援してまいります。

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