その「完璧」部下にも求めていませんか? ~管理職の完璧主義が職場に与える影響~

「なんでこんな簡単なことができないんだ」
「自分が部下のころは、これくらい当たり前にやっていた」

こうした言葉を口にしたことがある管理職の方は、少なくないかもしれません。あるいは、こうした言葉をかけ続けられ、じわじわと自信を失っていった経験を持つ方もいるでしょう。

「高い基準を持つこと」は、仕事において長らく美徳とされてきました。実際、完璧主義のうち、高い基準を持って努力する側面は、仕事の成果とプラスの関連があることが報告されています(*1)。

しかし、その同じ「高い基準」が、管理職になると部下への過剰な要求につながり、職場の雰囲気を悪化させたり、場合によってはハラスメントにつながったりすることがあります。

本コラムでは、「完璧主義」という性質の心理学的な構造を整理し、それが職場や組織にどのような影響をもたらすのかを考えます。管理職自身の気づきのきっかけとして、また人事・経営層にとっての組織づくりのヒントとしてお読みいただければ幸いです。

 

「完璧主義」とは

完璧主義というと、「何事も完璧にこなそうとする」「少しのミスも許せない」といったイメージを持つ方が多いかもしれません。

心理学では、米国心理学会(APA)が、完璧主義を、自分や他者に対してその状況で求められる以上に高い、あるいは欠点のない遂行水準を求める傾向と定義しています。

では、完璧主義は仕事にどのような影響をもたらすのでしょうか。

高い基準を持って努力することは、仕事上の強みになることがあります。細部まで丁寧に取り組む、品質にこだわる、より良い成果を目指して努力するといった姿勢は、その一例です。実際、2025年に発表された研究では、高い基準を持って努力する傾向と、仕事の成果との間にはプラスの関連が報告されています(*1)。
その一方で、失敗を過度に恐れたり、「まだ足りない」と自分を厳しく評価したりするのも、完璧主義の一つの側面です。こうした傾向が強い場合、バーンアウトとの関連も報告されています(*2)。

また、完璧さを求める対象は自分だけとは限りません。完璧主義には、他者に高い基準や完璧さを求める傾向もあり、「他者志向的完璧主義」と呼ばれています(*3)。
こうした他者に高い基準を求める傾向は、管理職として部下との関わる際にも表れます。たとえば、「自分ならここまでできる」「これくらいできて当たり前」といった基準を部下にも求め、細かなダメ出しや過度な要求につながることがあります。

つまり、高い基準を持つこと自体が問題なのではなく、その基準を自分や他者にどのように向けているかが重要です。

 

管理職の完璧主義が職場にもたらす影響

完璧主義的な傾向を持つ管理職は、高い成果を上げてきた方も多く、その責任感や丁寧さはチームの力になります。ただ、その傾向が強くなりすぎたり、プレッシャーの高い環境に置かれたりすると、職場にいくつかの変化が起きることがあります。

① 部下が育ちにくくなる
失敗が許されないと感じる環境では、部下は「怒られないこと」を優先して動くようになることがあります。自分の頭で考えて動くより、上司が求める正解を探すことに意識が向いてしまうのです。管理職は「なぜ自分で考えないのか」と不満を抱くかもしれません。しかし、細かな修正や否定が繰り返されることで、部下が自分で判断しづらくなっている可能性もあります。

② 報告・相談が来なくなる
ミスを報告するたびに厳しく責められる経験が続くと、部下は「できれば言いたくない」と考えるようになることがあります。その結果、小さな段階で共有できたはずの問題が、大きくなってから発覚することもあります。「報連相ができない部下」と考えるだけではなく、「報連相しづらい関係になっていないか」と振り返ることも必要です。

③ 主体的な人ほど窮屈さを感じる
主体的に動きたい人ほど、細かく管理される環境を窮屈に感じることがあります。自分なりに工夫しても細かく修正され、上司のやり方だけを求められる状態が続けば、自分で考える余地が少なくなります。結果として、主体的に働きたい人が職場を離れる要因の一つになる可能性もあります。

 

完璧主義はなぜ「ハラスメント」につながるのか

完璧主義的な傾向が強い管理職が、部下のミスに怒りを感じる時、その背景には別の感情が隠れていることがあります。心理学では、このようにある感情を背景に生じる感情を「二次感情」と呼びます。例えば、次のような流れです。

つまり、部下に対する怒りの背景には、管理職自身の失敗への強い不安や、評価への焦りが隠れていることがあります。そのことに気づかないと、部下のミスを必要以上に深刻に捉え、厳しい要求や叱責につながる場合があります。

実際、リーダーの完璧主義と怒りの表出が組み合わさることで、部下の心理的安全性や創造的な努力が低下する傾向が示されています(*4)。そのため、管理職が怒りを感じた時には、すぐに反応せず、「求めている水準は適切なのか」と一度立ち止まって考えることが重要です。

では、高い基準を仕事の強みとして活かしながら、部下への過剰な要求につなげないためには、どのように考えればよいのでしょうか。

 

管理職は「完璧」をどう扱えばいいのか

完璧主義的な傾向そのものをなくす必要はありません。品質にこだわり、高い基準を持って仕事に取り組むことは、より良い価値を提供するうえで役立つ場面もあります。大切なのは、完璧さだけを追い求めるのではなく、仕事全体を見て、何をどこまで求めるのかを判断することです。

① 「完璧」ではなく、全体のバランスを見る
ビジネスでは、QCDという考え方があります。QCDとは、Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)の3つの観点から、仕事全体のバランスを考えるものです。
例えば、品質を100点にするために時間やコストをかけすぎれば、必ずしも価値提供全体として最適とは限りません。すべてを100点にしようとするのではなく、たとえば実務上の目安として「85点程度の品質を安定して保つ」と考えるのも1つです。大切なのは85点という数字そのものではなく、自分の中の100点だけを追い続けないことです。

これは、部下に仕事を任せる時も同じです。管理職自身が「これくらいできて当たり前」と思っていても、それが部下にも求めるべき水準とは限りません。「自分ならここまでやる」ではなく、「この仕事では、どこまでの品質が必要なのか」と考えることが重要です。品質だけでなく、納期やコスト、顧客、部下、チームにも意識を向けることで、仕事全体のバランスを考えやすくなります。

② 部下の完璧主義を否定しない
真面目で高い基準を持つ部下に、「そんなに完璧にやらなくていい」「もっと力を抜いて」と伝えても、本人には受け入れにくいことがあります。
それよりも、「ここは丁寧にやってほしい」「ここは80点で十分」「今回は品質より納期を優先しよう」と、何を優先し、どこまで求めるのかを具体的に示すことが大切です。

その上で、細かな部分まで管理するのではなく、部下を信頼して任せます。求められている水準や優先順位がわかれば、部下も自分で判断しながら仕事を進めやすくなります。

③ 1人で整理するのが難しいときは、専門家に相談する
完璧主義的な傾向が仕事や部下との関わりに影響している場合、自分では「どこまでが仕事に必要な基準なのか」「なぜ部下のミスにこれほど反応してしまうのか」を整理しにくい場合があります。

そうした時は、心理職などの専門家と一緒に整理することも1つの方法です。自分が何に不安を感じ、どのような基準を「当たり前」と考えているのかを振り返ることで、完璧主義を否定するのではなく、その強みを仕事の中でどう活かしていくのかを考えやすくなります。

④ 組織として、管理職に求めるものを見直す
完璧主義の問題を、管理職個人だけの課題にしないことも重要です。管理職には、個人で高い成果を出すことやミスなく仕事をこなすことだけでなく、部下を育てること、相談しやすい関係をつくること、チームとして成果を出すことも求められます。

評価や昇進においても、個人としての成果だけではなく、こうした管理職としての役割を含めて考えることが大切です。

 

まとめ

完璧主義は、必ずしも悪いものではありません。高い基準を持ち、仕事の質にこだわる姿勢は、より良い成果につながる強みにもなります。

一方で、管理職になると、自分に向けてきた高い基準を、そのまま部下にも求めてしまうことがあります。「これくらいできて当たり前」という自分の基準が、部下への過度な要求になっていないか。一度立ち止まって振り返ることが大切です。

高い基準や品質へのこだわりを手放す必要はありません。大切なのは、自分の「完璧」だけを追求するのではなく、納期やコスト、部下の成長などにも目を向け、チーム全体でより良い価値を生み出すことです。

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参考資料

*1 Bellam, A., & Curran, T. (2025). Perfectionism and work performance: A meta-analysis. Journal of Occupational and Organizational Psychology, 98(3), e70050.

*2 Hill, A. P., & Curran, T. (2016). Multidimensional Perfectionism and Burnout: A Meta-Analysis. Personality and Social Psychology Review, 20(3), 269–288.

*3 Hewitt, P. L., & Flett, G. L. (1991). Perfectionism in the self and social contexts: Conceptualization, assessment, and association with psychopathology. Journal of Personality and Social Psychology, 60(3), 456–470.

*4 Ocampo, A. C. G., Gu, J., Li, Q., Koseoglu, G., Wang, L., & Ashkanasy, N. M. (2025). A multimethod investigation of the interpersonal effects of leader perfectionism and anger expression on employee psychological safety and creativity. Journal of Organizational Behavior, 46(1), 108–130

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