一般事業主行動計画の戦略的運用設計: 金融教育とFP相談で「くるみん認定」以上の実効性を

はじめに

企業が育休支援を強化し、くるみん認定や次世代育成支援の評価を高めるためには、制度を整備するだけでは不十分です。人的資本経営が求められる現在、従業員が「安心して育休を取得し、スムーズに復職できる環境」をどれだけ提供できるかが、企業価値そのものに直結する指標となりつつあります。

しかし実際には、制度があっても育休取得率が上がらない、復職後の定着率が伸びない、といった課題を抱える企業が少なくありません。その背景には、出産・育児期の従業員が抱える“家計の不安”が大きく影響しています。特に、収入減への懸念や給付金の複雑さ、復職後の働き方に伴う家計変動などは、制度説明だけでは不安を取り除けない領域です。

こうした課題に対し、近年注目されているのが「金融教育」と「FP(ファイナンシャルプランナー)相談」を組み合わせた、家計とキャリアの両面を支える支援モデルです。企業が一般事業主行動計画やくるみん認定の取り組みにこの仕組みを組み込むことで、従業員の意思決定を後押しし、育休支援施策の実効性を大きく高めることが可能になります。

 

 

1|子育て世代が直面する「お金の不安」は、制度理解だけでは解消できない

出産・育児期は、収入・支出・働き方が大きく変化する重要なライフイベントです。株式会社メヴィリエが2025年11月に実施した約150名規模のアンケートでは、育休取得をためらう理由の約8割が「お金の不安」であることが分かりました。制度自体は整っているにもかかわらず、「我が家の場合はどうなるのか」という個別の視点が不足していることが大きな要因です。

特に多く挙がった悩みは、収入減少に対する漠然とした不安、復職後の働き方が家計に与える影響、教育費・住宅費など長期家計の見通しといった、制度説明だけでは十分に解消されない領域でした。給付金や手当の計算方法が分かりにくいことも不安を増幅させています。

また、従業員が求めている支援として多かったのは、復職後の家計プランや給付金の具体的な試算、家計の見直し、収入と支出のシミュレーションなど“個別最適な判断材料”です。これらは制度説明会では対応しきれず、金融教育や専門家によるFP相談が必要となる理由でもあります。

 

 

2|金融教育×FP相談が、子育て支援施策を「実効性のある人的投資」に変える理由

金融教育とFP相談を組み合わせることで、企業は従業員の意思決定を支援し、子育て支援施策を人的資本経営における“投資”へと昇華できます。

■ 育休取得・復職の意思決定を支える

金融教育とFP相談は、育休中の収入見通し、給付金の受給額、復職後の働き方の選択肢、教育費・住宅費など将来支出の計画を、個々の家庭ごとに具体的な数字で可視化します。これにより、漠然とした不安が解消され、前向きな意思決定ができるようになります。結果的に、男性育休取得率の上昇、女性の円滑な復職、早期離職の防止、長期的なキャリア形成意欲の向上など、くるみん認定の評価項目にも直結する効果が期待できます。

 

■ 管理職・人事の負担を軽減する

家庭の家計状況や給付金に関する質問は専門性が高く、人事評価やキャリアへの影響懸念や、プライバシー等の個人的問題でもあることから、管理職・人事に相談しづらいといった構造的な課題が存在します。FP相談を導入することで、個別の家計相談や制度活用の最適な選択について専門家が対応でき、企業側の心理的・業務的負担が大幅に軽減されます。

 

■ 従業員のエンゲージメントとウェルビーイング向上

家計不安は子育て世代の最も大きなストレス要因のひとつです。専門家が伴走することで、企業への信頼感や心理的安全性が高まり、メンタルの安定、キャリア継続意欲の向上、離職率の低下といった人的資本経営の重要指標の改善につながります。

 

 

3|企業が金融教育とFP相談を導入する際の注意点

企業が従業員向けにFP相談を導入する際には、商品販売や保険勧誘を目的としない“中立性”が欠かせません。特定商品の斡旋や不適切な販売行為は従業員トラブルの原因となり得るため、企業導入に適したFP支援とは「金融商品販売を伴わず、完全に中立であること」が前提となります。

 

 

4|行動計画策定支援 × FP相談が生む「制度と実生活の橋渡し」

一般事業主行動計画は、目標を掲げるだけでなく、実際に従業員が活用でき、成果につながる運用が求められます。行動計画策定支援とFP相談を組み合わせることで、制度と実生活が結びつき、従業員が必要とする支援が可視化され、男性育休推進など企業の重点施策にも実効性が生まれます。

また、家計・制度・キャリアを一貫して支援できるため、両立支援施策のPDCAを回しやすくなり、人的資本経営における“従業員中心の環境づくり”を実現できます。

 

 

おわりに

子育て支援は福利厚生にとどまらず、企業の競争力を高める人的資本投資です。一般事業主行動計画の見直しや、くるみん認定取得を検討する企業にとって、金融教育とライフプラン支援(FP相談)の導入は、従業員の意思決定を支え、安心して働き続けられる環境を整える大きな後押しになります。

家計の不安解消は、従業員のメンタルヘルスの安定と企業への信頼感を大きく高めます。企業が個人のプライベートな不安領域まで中立的かつ専門的に支援する姿勢は、心理的安全性を醸成し、結果として従業員のエンゲージメントとキャリア継続意欲の向上へと繋がります。

 

この戦略的な取組を確実なものとするため、社労士法人プラットワークスは、経営課題に合わせた戦略的な行動計画策定と運用を担います。そして、この計画の実効性を高めるために、独立系FPである株式会社メヴィリエが、従業員一人ひとりの個別最適な家計不安を解消する金融教育とFP相談を提供。両社の提携により、専門性を融合した中立性の高い企業向けFP相談サービスを展開しています。

 

子育て支援の取り組みをより確かな成果につなげたい企業さまは、ぜひお気軽にご相談ください。

一般事業主行動計画策定支援 - 社会保険労務士法人プラットワークス|東京都千代田区・大阪府大阪市

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一般事業主行動計画とは、企業が自社の仕事と家庭の両立に関する状況把握と課題分析を行い、それを踏まえて策定する行動計画です。 従業員101人以上の企業に策定・届出・公表が義務付けられており、女性活躍推進法に基づくものと合わせて2種類があります。 弊法人では、現状の制度設計や従業員の利用実態の把握からお手伝いさせていただきます。まずはお気軽にご相談ください。貴社の課題解決と企業価値向上に繋がるよう、専門的な視点から伴走いたします。

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