【くるみん認定取得に向けた法対応⑧】子の看護等休暇~子育て関連規定を学ぶ~

くるみん認定基準において、「子育てサポート企業」の認定を受けるためにはすべての子育て世代の労働者にとって家庭の事情に柔軟に働くことのできる働き方の整備が必要です。共働き世帯が増加し、育児と仕事の両立が重要な課題となっている現代において、子どもの急な病気や行事への対応は多くの子育て世代の労働者にとって大きな負担となっています。こういった育児と仕事の両立をより一層支援していくための制度の一つとして「子の看護等休暇」があげられます。また、くるみん認定においても労働者数300人以下の事業主については、男性育休取得者がいない場合の認定基準の一つとして「子の看護等休暇」の取得実績が対象となっているので、「子育てサポート企業」認定の指標としても重要となる制度です。今回のコラムでは「子の看護等休暇」制度の成立までの背景と20254月の改正を含めた法改正、その概要について解説します。

子の看護等休暇

「子の看護等休暇」とは、小学校第3学年修了までの子を養育する労働者が子どもの病気や通院などで休暇を取得することができる制度です。子どもの看護だけでなく、インフルエンザなどの予防接種や健康診断などの疾病の予防のための措置、感染症による学級閉鎖や入園式・入学式・卒園式などの行事にも取得事由として認められています。これは「育児・介護休業法」の第16条に定められています。なお、この制度は20254月の「育児・介護休業法」の法改正にて、取得事由や対象者などの変更がありましたので、後ほど解説します。

対象者と条件、取得可能日数

日々雇用される者、1週間の所定労働日数が週2日以下の者を除く小学校第3学年修了までの子(9歳に達する日以後の最初の3月31日までの間)を養育する労働者が対象で、有期雇用者やパート・アルバイトも対象です。
取得可能日数は子が1人の場合、1年間に5日で、子が2人以上の場合は1年間で10日取得可能です。
なお、子どもが2人以上の場合、子ども一人あたりの取得日数に上限はなく(子ども一人に10日でもよい)、10日の範囲内であればどのような取得の仕方でも可能となります。
また2021年の法改正に伴い、時間単位の取得も可能となり、子のけがや病気が軽度であり、予防接種のように数時間のみ必要な労働者にとって、分散させて必要な時だけ子の看護休暇を取得することができます。なお、従業員が一日単位ではなく時間単位での休暇取得を希望した場合、事業主は時間単位で取得させる義務があります。
ただし、取得時の賃金については、無給・有給どちらも可能となるため、どちらとするかは会社の任意となり、注意が必要です。

制度成立の背景と法改正

では、この制度はどのような経緯で成立されたのでしょうか。その社会的背景として1990年代以降の急速な少子化の進行、共働き世帯の増加により育児期の労働者が子育てと仕事の両立支援の必要性が増したこと、ワークライフバランスを重視する風潮が高まったことで、労働者が仕事と家庭を両立できる環境づくりを求められたことがあげられます。1991年には「育児休業等に関する法律」の成立により、育児休業制度が整備され、1999年の法改正時に包括的な育児支援制度が導入し、その後「子の看護休暇」という名称で2002年に創設されました。なお、制度創設当時は努力義務で制度の設置は事業主の任意とされていましたが、2005年からは設置が義務化されたため、「子の看護休暇」を取得する権利のある労働者が希望すれば、必ず取得ができ、事業主は拒むことができません。
また、2021年には「子の看護等休暇」の時間単位での取得が可能となり、取得事由によってより柔軟な休暇の取得が可能となりました。

20254月の改正について

「子の看護休暇」は20254月に改正され、「子の看護等休暇」に名称を変えました。改正点として、対象となる子の年齢範囲・取得事由が広がったこと、休暇を取得できる労働者の対象が広がったことがあげられます。

対象となる年齢は従来の「小学校就学前」から「小学校3年生の終了年度(9歳に達する日以後の最初の3月31日まで)」までに拡大されました。

また取得事由としては「子の病気・けが」、「予防接種・健康診断」に加えて「感染症に伴う学級閉鎖等」、「入園・入学式・卒園式」が追加されました。なお、授業参観や運動会への参加などは「子の看護等休暇」の取得事由とならないため、注意が必要です。また、労使協定により対象から除外できる従業員について「雇用継続6か月未満の労働者」の要件が不要となり、より多くの労働者が取得できるようになりました。

(※参考:厚生労働省「育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法の2024年改正ポイント」

改正内容

改正前

改正後

名称

子の看護休暇

子の看護休暇

対象の子の範囲

小学校就学の始期に達するまで

小学校3年生修了まで

取得事由

①    病気・けが

②予防接種・健康診断





①病気・けが

②予防接種・健康診断

③感染症に伴う学級閉鎖など

④入園(入学)式、卒園式

除外できる労働者(労使協定)

①    週の所定労働日数2日以下

②    雇用継続が6か月未満

①    週の所定労働日数2日以下

※②の条件を削除

子の看護等休暇に対する助成金

なお、「子の看護等休暇」の取得は「両立支援等助成金」の「柔軟な働き方支援コース」にある「職場復帰後支援」に該当します。以下の要件を満たす事業主は他の短時間勤務制度やテレワーク等の柔軟な働き方制度1つ以上と組み合わせて制度導入することで制度利用者1名あたり2030万円の助成金が支給されます。
(※参考:厚生労働省「2025年度  両立支援等助成金のご案内」

・以下、法定範囲を上回る子の看護等休暇制度を導入している
(育児介護休業規程に定める必要があります)

①有給の休暇とする
②1年度あたり10日以上利用可能とする
③時間単位(または時間未満単位)で取得でき、中抜けでの取得ができる

・子の看護等休暇を6か月間で20時間以上取得している

・子の看護等休暇を導入し、育児休暇から復帰後の利用実績がある

子の看護等休暇の運用にあたっての注意点

 育児期の労働者が子の看護等休暇を希望する場合に備えて、企業としては制度運用時に以下の点に気を付けて対応するとよいでしょう。

・制度理解と従業員への周知
…従業員から申請があった時にスムーズに対応できるように制度について理解し、育児介護休業規程に定め周知しましょう。また、子の看護等においては急を要する事由となることが多く、当日に休暇が必要になる事態が想定されるため、申請手続きについては事後の提出を認めるなどの柔軟な対応ができるようにしておくとよいでしょう。

・適正な労働時間の把握と業務調整、勤怠管理システムとの連携
…適正な労働時間の把握とともに、勤怠管理システムとの連携調整も大切です。また、制度活用にあたり、特定の部署や従業員に勤務時間の偏りが起きないよう業務量が適正か調査を行い、従業員の負担や業務量の調整を行いましょう。また、「子の看護等休暇」は通常急な休暇取得となる可能性が高いため、普段から事業場内の生産性の向上を目指し、業務効率化や無駄な業務の削減などを行うことが大切です。

・制度利用により不利益を与えない
子の看護等休暇を取得することで、正当な理由なく拒否すること、不当な減給や解雇をすること、制度を利用する従業員に不利益な人事評価を行うことは法律で禁止されています。また、子の看護等休暇を無給とすることも可能ですが、自己都合で出勤すべき日を休む「欠勤」とは別にしておく必要があります。不利益取り扱いを行っていないか、厚生労働省のホームページで確認するようにしましょう。

 

今回のコラムでは子育て関連の規定のひとつである「子の看護等休暇」について解説しました。制度利用時に希望者が制度内容を理解し、安心して制度活用ができるよう、企業や人事労務担当者が従業員に対し制度の目的や要件を十分に理解し説明できるようになることはもちろん、制度を活用する従業員のサポートや周囲の従業員の負担を軽減できるような仕組みづくりをしていくことも大切です。そして、このような制度利用や働きやすい職場環境整備において、各種制度や企業の労務管理に精通し、企業の実態に応じたアドバイスのできる専門家のサポートが重要となります。

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