【くるみん認定取得に向けた法対応⑪】育児目的休暇(子の看護等休暇・養育両立支援休暇との違い)~子育て関連規定を学ぶ~

くるみん認定基準において「子育てサポート企業」の認定を受けるために、すべての子育て世代の労働者にとって、家庭の事情に合わせて柔軟に働くことのできる働き方の整備が必要です。共働き世帯・多様な働き方を選択する労働者が増加し、育児と仕事の両立が急務となっている現代において、多様化する課題に対応していくことが求められます。こういった育児と仕事の両立をより支援していくための制度の一つとして「育児目的休暇」があげられます。くるみんの認定基準のひとつである「男性の育児休業等の取得率」または「企業独自の育児目的休暇の取得率」が合計20%以上とされているように「育児目的休暇」の制度整備は「子育てサポート企業」の認定を受ける上でも重要となります。今回のコラムでは「育児目的休暇」の概要についてと混同しやすい「子の看護等休暇」、「養育両立支援休暇」制度との違いについて解説します。

育児目的休暇

「育児目的休暇」とは、小学校就学前の子をもつ労働者が、育児にかかわる目的で利用することができる休暇制度です。 育児・介護休業法第24条に基づき、子を養育する労働者の雇用の継続と、男性労働者の育児参加を促進する目的で、2017年に制定されました。育児目的休暇は制度を設けることを努力義務としており、必須ではありません。また、育児目的休暇は子の看護等休暇、介護休暇、年次有給休暇として与えられるものを除いて、配偶者の出産前の入院準備、出産後の子の養育、子の行事参加などを含むとされています。

子の看護等休暇、養育両立支援休暇との違い

子育てに関する休暇として、「育児目的休暇」のほかに「子の看護等休暇」「養育両立支援休暇」があげられます。

・子の看護等休暇と育児目的休暇
「子の看護等休暇」は小学校3年を修了するまでの子を養育する労働者が子どものケガや通院などで休暇を取得することができる制度です。育児・介護休業法第16条に基づき、従業員の権利として設置が義務化されたため、労働者が希望すれば事業主は拒むことができません。取得目的は子の看護や予防接種などの疾病予防、入園式や卒園式など限定的であるのが特徴です。それに対し育児目的休暇は制度を設けることを努力義務としているため、規定に定めがなければ利用できません。また、育児目的休暇は育児のための休暇であるため、配偶者出産後の育児や、子の行事参加など、子の看護を主な目的とした子の看護等休暇と比較しより広い目的で取得可能となります。

・養育両立支援休暇と育児目的休暇
「養育両立支援休暇」は3歳から小学校就学前の子どもを育てる従業員が仕事と育児を両立しやすくするための休暇制度で、育児介護休業法第16条に基づき2025年10月より施行され、全事業主に義務付けられる「柔軟な働き方を実現するための措置」の5つの選択肢のうちの一つとなります。取得目的は育児のためであれば限定はされずに、従業員側にゆだねられます。例えば、保育園等への送迎や小学校の下見、習い事の送迎、普段保育園の送迎を行っている配偶者の仕事都合により、代わりに保育園送迎を行う等も取得目的とすることができます。

育児目的休暇については育児目的の休暇であれば柔軟に会社で設定できるものの、養育両立支援休暇は従業員に取得事由がゆだねられる点で、養育両立支援休暇の取得目的の方が広いといえます。また、取得可能な子の年齢も出産日前後から可能な育児目的休暇に対し、養育両立支援休暇については3歳からとなるため大きく異なります。

名称

育児目的休暇

子の看護等休暇

養育両立支援休暇

目的

育児に関する目的のため(配偶者の出産前後の育児、子の行事参加含む)

子の看護や疾病予防のため、入園式、卒園式

子を養育する労働者が就業しつつ子を養育するため(幅広い)

子の年齢

小学校就学前まで

小学校3年生まで

3歳以上小学校就学前まで

取得日数

定めなし

5
10日(子が2人以上)

10

導入義務

努力義務

義務

選択的措置義務

<取得目的の違い>

3つの子育て関連休暇の取得目的の範囲を図示すると以下のような違いがあります。

養育両立支援休暇は従業員の判断にゆだねられるため最も広く、育児目的休暇についても会社で定めることが可能となるためやや広くなります。子の看護等休暇は子の看護を中心として目的が限定されているのが特徴です。

養育両立支援休暇と育児目的休暇の違い、子の看護等休暇と育児目的休暇の違い

<取得可能な子の年齢の違い>

子の看護等休暇と育児目的休暇の違い、養育両立支援休暇と育児目的休暇の違い 参考)育児休業との違い

 育児休業は事業主が育児・介護休業法第2条に基づき、取得させなければならない(義務)制度です。子が1歳になるまで休業することができます。会社の規定の有無にかかわらず、取得させる必要があります。つまり、事業主が「育児休業制度」を規程に定めていなくても、従業員は「育児休業」取得する権利があります。また、休業期間についても子が1歳になるまでの連続してまとまった期間を休むことができます。さらに、要件を満たす場合雇用保険より給付金を受けることもできます。

 一方で、育児目的休暇は育児・介護休業法第24条に基づき、子が小学校就学するまでに育児に関する目的で利用できる休暇制度で、事業主が制度を設けることを努力義務としています。ですので、育児目的休暇については会社の規定に定めがなければ利用できません。また。有給・無給のどちらとするかは会社の規定によるため。会社の規定によっては無給となることがあります。休暇の取得は分割して取得も可能となるため、育児休業と比較して、子の看病や入園式などの短期間にわたって利用することができるので、働きながら育児を行う上で役立つ制度となります。

育児目的休暇の導入・運用にあたっての注意点

 「育児目的休暇」制度を導入する際は、企業としては以下の点に気を付けて対応するとよいでしょう。

・制度理解と従業員への周知
「育児目的休暇」は事業主の努力義務となる制度で、付与日数や有給か無給とするかは企業側の判断により定められ、申請方法についても企業によって異なるため、就業規則等で定め、従業員が申請しやすいよう配慮したうえで申請期限や手続き方法を定め、従業員に周知していくとよいでしょう。また、「育児目的休暇」制度は企業独自で設ける任意の制度であるため、このような細かなルールを定める際は労務管理に精通した専門家の意見を加味したうえで制度設計していくとよいでしょう

・制度利用により不利益を与えない
「育児目的休暇」を利用することにより、正当な理由なく制度利用を拒否すること、不当な減給や解雇をすること、制度を利用する従業員に不利益な人事評価を行う、制度利用を控えさせるような言動等を行うことは法律で禁止されています。不利益取り扱いを行っていないか、厚生労働省のホームページで確認するようにしましょう。

今回のコラムでは「育児目的休暇」について解説しました。制度利用時に希望者が制度内容を理解し、安心して制度活用ができるよう、企業や人事労務担当者が従業員に対し制度の目的や要件を十分に理解し説明できるようになることはもちろん、制度を活用する従業員のサポートや周囲の従業員の負担を軽減できるような仕組みづくりをしていくことも大切です。特に育児目的休暇制度は自由度の高い制度であるため、企業側の従業員の実態に応じた制度設計力が重要となります。このような制度利用や働きやすい職場環境整備において各種制度や企業の労務管理に精通し、企業の実態に応じたアドバイスのできる専門家のサポートが重要となります。

弊法人では社内の規程改定のご支援「くるみん認定」取得申請のご支援を積極的に行っております。また、各企業の雇用形態や勤務形態等に合わせて柔軟にカスタマイズできる勤怠管理システムの提供も行っております。ぜひご活用ください。
また、弊法人では人事労務アドバイザリー業務をおこなっており、日常的な労務管理に関するご相談から、例外的な労務問題にいたるまで、幅広い労務相談に対応しております。判断に迷った時はぜひ弊法人にご相談ください。

関連サービス

企業認定制度

国の行政機関や一般社団法人などが実施している企業認定制度は企業にとって、従業員が働きやすい環境が整ったり、自社の強みを優秀な人材や顧客へアピールできるなどのメリットにつながります。弊法人が貴社にとって有意義な認定制度のご提案から取得にいたるまで一連の流れを代行やご支援という形でサポートいたします。

関連サービス

人事アドバイザリー

日常的な労務管理に関するご相談から、例外的な労務問題にいたるまで、幅広い労務相談に対応しております。判断に迷った時はぜひ弊法人にご相談ください。

関連サービス

制度構築

弊法人は、就業規則や評価制度の整備、業務改善支援など制度構築の支援を行っております。貴社の事業特性を組織風土を踏まえた運用しやすい制度をご提案することにより、貴社の社員の力を引き出し、事業のさらなる発展に寄与します。

【くるみん認定取得に向けた法対応⑩】選択的措置義務~子育て関連規定を学ぶ~
【くるみん認定取得に向けた法対応⑩】選択的措置義務~子育て関連規定を学ぶ~

働く自由をすべての人に

子どもの頃、お手伝いをしながら、理由もなくワクワクしたあの気持ち。
そんな「働くことの楽しさ」を感じられる組織をつくるために私たちは常に問いかけます。
「本当に必要なルールとは何か?」
「心は自由で、のびのびと働けるだろうか?」
私たちは自分の「夢」を信じ、社会で挑戦する人々をサポートし続けます。
すべては、世界の可能性を広げるために。