管理職を罰ゲーム化させない組織へ ~役割の拡大 × 深化による貢献の視点でプレイングマネジャーから抜け出す~

最近、「管理者になりたくない」という声を聞く機会が本当に増えました。昇進を打診しても断られる、または露骨に嫌な顔をされるなどネガティブな反応を見出しにしたニュースや記事をみたことがある方も多いのではないでしょうか。
ただ、これは若手の意欲が下がったからとか、価値観が変わったからとか、という単純な話ではないと感じています。現場を見ていると、むしろ「管理者の仕事が割に合わなくなった」という方が実態に近いと感じます。責任は重い、仕事は増える、成果が出なければ責められ、問題が起きれば矢面に立たされる。それだけ頑張っているのに、評価や報酬が大きく変わるわけでもない。これでは「罰ゲーム」と言われても仕方がないかなと思ってしまいます。
ここで効いてくるのが、過去コラムで紹介してきた「役割の拡大 × 深化」や貢献アセスメントを土台にした新しい運用の仕組み(役割貢献制度)です。
今日はなぜこの役割貢献制度罰ゲーム化した管理職を救うのか深堀していきたいと思います。

管理職に求められる役割がどんどん増えている

多くの企業で起きているのは管理職個人の能力不足でも覚悟不足でもないと考えています。問題は、管理職というポジションに対応しきれないほど多くの役割を押し込んできたことです。
目標設定に始まり人材育成、組織としての数字の達成も求められる、他部署との調整や部長や役員への報告などなど、挙げていくとキリがありません。正直、全部を完璧にやれる人などほとんどいないと思っています。

人事制度、評価制度、等級制度、管理職、労働基準法、トータルリワード、役割、職能資格制度、役割等級制度、職務等級制度、基本給、手当、やりがい、ワークライフバランス、賞与、退職金、貢献、評価、アセスメント、管理職、戦略、リーダーシップ、モチベーション、エンゲージメント、ハラスメント、パワハラ、逆パワハラ
結局のところ、時代の流れとともに組織に求められる役割をとりあえず管理職へ割り当てる、という考えが意識的にも無意識的にもあったのかもしれません。もちろん、非管理職の役割を増やすことは管理職以上に退職リスクのリスクが高いため、ある程度やむを得なかったことは理解していますが、この流れは変えていかないといけません。
このような課題を解消する際に活用できる方法として、過去のコラムなどで取り上げている「役割の拡大 × 深化」による貢献度マトリクスを土台とした役割貢献制度が挙げられます。
役割貢献制度がもたらす納得感の違いは、管理職という「箱」の中に全部を押し込むのではなく、この「箱」を解体し、『育成役割』や『組織横断的な高度な調整役割』といった目に見えにくい貢献を個別に切り出して整理するとともに、明確に報酬単価(ロール・レート)を設定する点にあります。「管理職だからやって当然」ではなく、「この難易度の高い役割を担っているから、この報酬が支払われる」という貢献と対価のダイレクトな紐付けを行うのです。
これにより、管理職は自身の注力すべき役割が明確になり、その成果が正当に報われるという確信を持つことができます。育成が得意な人が育成に立つ、調整が得意な人が調整に立つ、専門性が必要な局面では、その道のプロが前に出る。そうやって可視化された役割を分解していくと、「管理職=何でも屋」から抜け出せるようになっていきます。

プレイングマネジャー地獄から抜け出せる

管理職が苦しくなる大きなポイントとして挙げられるのは「任せる余裕がない」ことです。忙しくなればなるほど、「任せるより自分でやった方が早い」という判断になった方も多いのではないでしょうか。当然、これは怠慢ではなく合理的な判断と言えます。
ただ、その合理性の積み重ねが「部下を育てない→任せられない→さらに自分が抱える」という悪循環に繫がってしまうのも事実です。しかも、その状態で「1on1をちゃんとやれ」「育成しろ」と言われるので、形だけの1on1や育成に繫がり、単に時間を取られるだけになり、最終的に何のために1on1などをやっているのか分からなくなってしまうことで、さらに罰ゲーム感が増していってしまいます。
貢献役割制度による貢献度マトリクスを活用した運用にすると、ここが変わります。ポイントは、管理職が「自分で成果を作ること」だけで評価されるのではなく、任せて成果が再現されたことや、再現できる状態に引き上げたことが貢献として扱われやすくなるところです。そうすると、「自分が全部やらないと評価が下がる」という不安が薄れていきます。
また、誰が何をできるのかが可視化されているので任せることが怖くなくなる。任せる理由ができる。結果として、プレイングマネジャーから抜け出す現実的な道が見えてきます。

人事制度、評価制度、等級制度、管理職、労働基準法、トータルリワード、役割、職能資格制度、役割等級制度、職務等級制度、基本給、手当、やりがい、ワークライフバランス、賞与、退職金、貢献、評価、アセスメント、管理職、戦略、リーダーシップ、モチベーション、エンゲージメント、ハラスメント、パワハラ、逆パワハラ

「評価者」ではなく「伴走者」に役割を戻せる

今の管理職がしんどいのは、マネジメントそのものよりも「評価で揉める」「説明責任だけ増える」「ハラスメントを恐れて言えない」という、周辺コストが膨らみ続けていることも大きいです。つまり、管理職が単なる「火消し役」になってしまっているという印象を受けることも多いです。最近ではこういった管理職の立場が弱くなったことで部下が必要以上に強気に出たり訴訟をちらつかせる「逆パワハラ」といった言葉も出てくるくらい、管理職の精神的負荷は大きいものになってきています。
このような課題を貢献役割制度でどのように解消していくか、ここで大事なのは従来の評価という視点ではなく、制度の言葉にあるように貢献の視点になります。上から点数をつける評価者で居続けるほど管理職は孤立してしまいます。だからこそ、この仕組みでは、管理職(あるいは評価する人)の役割を、上から裁く人ではなく、一緒に確認する人に寄せていき、評価ではなく「アセスメント」をすることで「承認」に繋げるのです。

人事制度、評価制度、等級制度、管理職、労働基準法、トータルリワード、役割、職能資格制度、役割等級制度、職務等級制度、基本給、手当、やりがい、ワークライフバランス、賞与、退職金、貢献、評価、アセスメント、管理職、戦略、リーダーシップ、モチベーション、エンゲージメント、ハラスメント、パワハラ、逆パワハラ管理職が部下を評価する際のストレスは、根拠の薄い『印象評価』を強いられることにあります。役割貢献制度では、アセスメントによって貢献が客観的に可視化されるため、管理職は『主観で裁く負担』から解放されるのです。
「できた/できていない」を突きつけるというより、「今ここまで来た」「次はここを狙おう」「再現できる状態になったかを一緒に確認しよう」という評価者から伴走者へ形に変えることで管理職は部下にとって距離の遠い存在ではなくなり、コミュニケーションの質を上げることができます。その結果、管理職が抱える精神的コストが下がることにも繋がります。罰ゲーム感を生むのは業務量だけではなく、こういった人間関係の摩擦の積み重ねも大きいので、ここを減らせる意味は大きいと考えています。

管理職がいなくてもよい「役割が循環する組織」へ変えられる

管理職が疲弊していく組織は一時的には上手くいっても長く持ちません。疲弊する管理職を見ている部下は管理職になりたいと思わないですし、管理職もそのような状態では部下を育成する余裕がなくなってしまいます。
役割貢献制度は成長を具体的に可視化し、管理職を救うだけではなく役割が循環する構造を作れることにも強みがあります。プロジェクトがある時に、その資格や資質のある人がリーダーやマネージャー役を担う、終わったら戻るという、固定ポストではなく、役割が発生し役割が終わる。だから「上に行く=一生背負う」になりません。いわゆる固定した管理職がいなくても、貢献度マトリクスからその役割を担える人がいることが分かれば、その人を管理職・リーダーにアサインし事業を推進してもらうことができるのです。
そして、役割が分解されると育成も現実的になります。「次の管理職を作る」ではなく、「次にこの役割を担える人を増やす」という発想になるからです。これなら候補者の裾野が広がりますし、本人にとっても挑戦のハードルが下がります。
罰ゲーム化した管理職問題は、つまるところ「なり手不足」に行き着きます。このなり手不足を解消するには、気合ではなく、仕組みとしての循環を作ることが重要です。
また、管理職が疲弊すると前回のコラムで触れたバーンアウト(燃え尽き)も起きやすくなります。だからこそ制度面の再設計に加え、感情に安全に向き合えるPlaTTalksなどの相談先を併せて整えることで、持続的な熱意=ワーク・エンゲージメントを守ることに繋げていきましょう。

 

組織に合った人事制度を実際に機能させるためには、制度設計だけでなく、その運用を支える体制づくりが不可欠です。期待される役割や評価基準、処遇の考え方を明確にし、それらを日常のマネジメントに落とし込む仕組みを整えることで、制度は初めて企業の成長を支える実効性のある仕組みになります。
プラットワークスでは、事業戦略や組織課題に応じた人事制度や株式報酬制度の設計に加え、運用が定着するためのプロセス整備や評価者研修など、実務に密着した支援を提供しています。
制度の導入や見直しをご検討の際は、ぜひお声がけください。

制度構築 - プラットワークス|社会保険労務士法人プラットワークス|東京都 千代田区 大阪市|社労士法人 社労士事務所

また、すぐに契約というほどではないが「専門家に相談したい」といった、スポット的なアドバイザリーも弊法人では受けております。企業様のご相談のほか、個人の方からの相談についても、元労働基準監督官である弊法人の代表が相談内容を聞き、ご状況を踏まえつつ個別のアドバイスを行います。

スポット相談プラットワークス|社会保険労務士法人プラットワークス|東京都 千代田区 大阪市|社労士法人 社労士事務所

関連サービス

人事アドバイザリー

日常的な労務管理に関するご相談から、例外的な労務問題にいたるまで、幅広い労務相談に対応しております。判断に迷った時はぜひ弊法人にご相談ください。

関連サービス

企業向けオンラインカウンセリングサービスPlattalks

「社会保険労務士」と「臨床心理士(公認心理師)」の協同で支援を行う、日本唯一の企業向けオンラインカウンセリングサービスPlattalksを運営しております。カウンセラーによる従業員のメンタルヘルスケアを行うだけでなく、相談者の希望に応じて社会保険労務士との連携、相談対応も行っており、働きやすい体制構築に活用することができます。

関連サービス

制度構築

弊法人は、就業規則や評価制度の整備、業務改善支援など制度構築の支援を行っております。貴社の事業特性を組織風土を踏まえた運用しやすい制度をご提案することにより、貴社の社員の力を引き出し、事業のさらなる発展に寄与します。

バーンアウトの構造と「燃え尽き」を防ぐワーク・エンゲージメント
バーンアウトの構造と「燃え尽き」を防ぐワーク・エンゲージメント
AI時代のスキルと人材育成 ~AIが代替できない「深化」の正体とは?~
AI時代のスキルと人材育成 ~AIが代替できない「深化」の正体とは?~

関連記事

働く自由をすべての人に

子どもの頃、お手伝いをしながら、理由もなくワクワクしたあの気持ち。
そんな「働くことの楽しさ」を感じられる組織をつくるために私たちは常に問いかけます。
「本当に必要なルールとは何か?」
「心は自由で、のびのびと働けるだろうか?」
私たちは自分の「夢」を信じ、社会で挑戦する人々をサポートし続けます。
すべては、世界の可能性を広げるために。