もくじ
アメリカのコンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーが従業員全体の1割にあたる数千人規模のリストラを行うことを発表しました。
また、アクセンチュアでも1万人以上(約1300億円規模)に渡るリストラ計画が発表されたように、アメリカを筆頭に世界的なコンサルティング企業やテック企業において相次ぐ人員削減が行われています。その背景としてAIの台頭があげられます。
AIが得意とする分析や集計等といった従来人間が行ってきた一部業務が代替されることで、大量のデータ処理や分析をメインで行ってきたバックオフィス部門やテック部門等を中心に人員削減を行う企業が増えています。
そして、AIの技術の発展は日本の労働市場においても大きな影響を与えつつあります。人手不足が深刻となっている日本においてはAIによる業務効率化などメリット面が注目されていますが、AIによる業務代替によって、大企業を筆頭として、アメリカのようなAI台頭による人員削減が日本でも起こりうると考えています。
では、このようなAI時代において活躍し続ける人材であるために、どのようなスキルが求められているのでしょうか。
今回のコラムではAIに代替されるスキルと代替されにくいスキル(今後求められるスキル)、そしてAI時代に会社に求められる人材育成について解説していきます。
AIが代替しやすいスキルと代替しにくいスキル
では、AIによって代替されやすいスキルはどのような特徴があるのか、そして、代替されにくく今後重視されると予想されるスキルはどのようなものがあるのでしょう。
AIが代替しやすいスキルはデータに基づく定型的な処理、マニュアル化されやすい単純作業、大量のデータ分析や情報収集、高度な判断や共感を必要としない作業があげられます。これらのスキルはバックオフィス部門などのホワイトカラーのワーカーの業務に対応しています。
【AIが代替しやすいスキル例】
①データ入力・処理: 帳票のデジタル化、データ集計。
②定型的な文書作成: 定型的な報告書やメール作成。
③情報収集と要約: 大量の情報から事実を抽出、記事の要約。
④一般レベルの翻訳・通訳: 専門性が低く、文脈の理解が単純なもの。
⑤単純な問い合わせ対応: FAQに基づいた自動応答で対応可能。
⑥製造業のライン作業: 反復的で精密な動作。
それに対し、AIが代替しにくいスキルとしては人間特有の能力である、創造性や発想力や、相手の感情や非言語的情報を理解し信頼関係を構築する高度のコミュニケーション能力、複雑な状況下での判断や倫理的な対応、また身体的精神的に熟練した職人技、そしてAI関連の活用スキルなどがあげられます。
【AIが代替しにくいスキル例】
①創造性、企画業務: ゼロから新しい価値やアイディアを生み出す力
②対人支援業務: 相手の感情や非言語的情報を理解し、信頼関係を構築する力
③複雑な判断・交渉: 前例のない問題や倫理的な問いへの対応
④高度な専門性を要する業務: 複雑で繊細な手作業や熟練の経験に基づく力
⑤AI関連の専門知識と応用力: AIをツールとして仕事の効率化のために活用する力
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スキル |
具体的職務 |
AIに代替されにくい理由 |
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創造性・企画力 |
芸術家、クリエイター(オリジナリティある創作)、経営戦略立案 、研究開発 |
人間独自の感性や感情の深み、新しい価値を生み出す発想力 |
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対人関係・共感力 |
医師、看護師、介護士、心理カウンセラー、教師、営業・コンサルタント(信頼関係構築、顧客の心理を読み取る) |
相手の感情に寄り添う力、温かさ、倫理観、個別的な柔軟な対応 |
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複雑な判断・交渉 |
弁護士、裁判官、マネージャー(職場の人間関係の調整、組織的な意思決定) |
倫理観に基づく判断、利害関係者の調整、前例のない状況への対応力 |
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高度な身体性 |
理美容師、ネイリスト、職人技を要する仕事 |
複雑で繊細な手作業、身体的なセンスや経験が求められる技術 |
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AI関連応用スキル |
AIエンジニア、データサイエンティスト 、プロンプトエンジニア |
AIを開発・活用・制御するための高度な専門知識と、その応用力 |
AI時代に活躍する人材育成のために~求められるスキル~
では、AI時代において活躍できる人材となるためにはどのようなスキルを磨くことが大切でしょうか。以下があげられます。
①AIリテラシー
・AIの理解:AIの基本的な仕組みの理解と利用における倫理的問題、プライバシーの重要性を認識する
・適切に評価し利用する力:AIの結果を正しく評価し適切に利用する力
・リスク管理:AI使用時のリスクを考慮してトラブルを未然に防ぐ能力
②想像力と批判的な思考
・創造性、発想力:新しい価値観はビジョンを生み出す力、多角的視点
・クリティカルな思考力:AIの結果をうのみにせず、本質的課題を特定する力
③ヒューマンスキル
・共感力と人間関係スキル:相手の感情をくみ取り、信頼関係を築き組織を動かす力
特に、AIは従来人間が行っていた膨大な情報収集や分析などの定型的なタスクを担うことになるため、人間はより創造的で対人スキルを求められる業務を中心に担うことになっていくでしょう。それにより、従来は軽視されがちであった看護・介護・保育現場等の共感力やコミュニケーションスキルが求められるケア労働の価値の見直しが起きると考えています。このことから、AI時代においてはAIを活用するスキルはもちろんのこと、人間特有の発想力や想像力、コミュニケーション能力を磨くことが重要といえます。
そのために、企業としてできることはAIの変化の波にのまれるのではなく、AIを手段として役割分担をしつつ、人間にしかできないスキルの高い人材を育成していくことです。AI時代の人材育成では、AIの基礎知識や活用方法ばかりでなく、人間らしい創造性や思考力、共感力や人間関係構築力などの育成が求められていくでしょう。これまでのコラムで解説してきたようにケア労働に代表される「ケアの倫理」の考え方が、労働者個人の育成においても重視される側面となっていくと予想されます(ケアの倫理①、ケアの倫理②)
AI時代に活躍する人材育成のために~プラットワークスの「役割貢献制度」とPlaTTalks~
このようなスキルを向上するために、オンライン研修や座学などのインプットだけでなく、ディスカッションやグループワークなどで実践する機会を設け、フィードバックの機会を得ることが大切です。こういった人材育成の制度構築について専門家の知見を借りるとよいでしょう。また、このようなスキルを評価する際に従業員の成果だけでなくそのプロセス、従業員自身の役割に着目した人事評価制度設計も重要です。
プラットワークスでは、「役割の拡大と深化」を実現する新しい人事制度「役割貢献制度」を提唱しています。この人事評価制度は従来の評価制度と比べ、「役割」という流動性のある概念を「拡大×深化」という二軸を用いた評価制度であるため、流動的な「役割」を軸にすることで、ジョブローテーションの慣習がある日本の組織風土にマッチしており、さらに評価軸が明確であるというメリットがあります。
また、プロフェッショナリズムを追求する「深化」の評価軸では、「AIが出した答えを批判的に吟味し、複雑な利害関係を調整して意思決定する役割」といったより深化を高める評価につながるため、AIの活用によってより制度の有用性が高まるといえます。
また、成果だけでなく成果に到達するための貢献度を段階的に設定することで、プロセス面の評価も可能になるため、的確な評価ができる制度になります。さらに「役割貢献制度」では、業務軸の評価制度であるジョブ型の評価制度と比べ、AIによる業務の消滅にも対応することができるため、AI時代の業務の急激な変化にも対応することができます。
弊法人では、人事評価制度を含め、事業主の事業特性や組織風土に合った働きやすい職場環境づくりのための制度構築支援を行っております。ぜひご活用ください。
弊法人は「社会保険労務士」とメンタルヘルス面の支援にかかわる「公認心理師(臨床心理士)」の協同で支援を行う、日本唯一の企業向けオンラインカウンセリングサービスPlaTTalksを運営しております。AI時代に対応するために、リスキリングをすることやヒューマンスキルを求められる業務に多く携わるようになることで、従業員に対して心理的負荷が生じると考えられます。その担を軽減するために、外部の専門家のメンタルヘルスケアを受けることで、従業員はより業務へ集中して取り組むことができるようになるでしょう。。
PlaTTalksではカウンセラーによる従業員のメンタルヘルスケアを行うだけでなく、職場環境に問題がある場合は相談者の希望に応じて社会保険労務士との連携、相談対応も行っており、働きやすい体制構築に活用することができます。




