もくじ
近年、インターネットやSNSの発達に伴い、ニーズや価値観、ビジネス環境が急速に変化する中で、社会の不確実性はよりいっそう増しています。こうした複雑な時代においては、短期的な視点にとどまらず、中長期的な視野で企業価値を生み出し続けることが求められます。そのためには、環境問題や人権、企業統治といった「非財務的情報」への取り組みが不可欠です。
この流れを受け、金融庁は有価証券報告書におけるサステナビリティ開示(ESGや人的資本など)の開示を義務化し、大手・上場企業を中心に「女性活躍推進」に関する情報開示が強く求められるようになりました。これに伴い、有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の参照先・客観的根拠として、「女性の活躍推進企業データベース」を活用する企業が増えています。
「女性の活躍推進企業データベース」は、厚生労働省が運営する、全国の企業の女性活躍に関する取組みや数値データを集約・公開しているポータルサイトです。 女性活躍推進法に基づき、企業が自社の現状や目標を公開する場として活用されており、現在の登録企業数は4万4千社以上にのぼります。「女性の活躍推進企業データベース」は、単なる行政への届出サイトにとどまらず、適切な人的資本開示を行い、「優秀な人材を確保できる働きやすい企業」であることを証明する一次データプラットフォームとして重要視されています。
今回のコラムでは、「女性の活躍推進企業データベース」の概要と公表手順、データ算出にあたっての注意点、未公表におけるリスクなどを詳しく解説します。
掲載される主な情報
掲載情報は主に以下の5つのカテゴリーに分けられます。
1)採用、継続就業
・労働者に占める女性労働者の割合
・男女別の再雇用又は中途採用の実績
・平均継続勤務年数の男女差又は男女別の採用10年前後の継続雇用割合
・男女別の育児休業取得率
2)働き方改革
・一月当たりの労働者の平均残業時間数
・年次有給休暇取得率
3)登用、キャリア
・係長級にあるものに占める女性労働者の割合
・管理職(課長級以上)に占める女性労働者の割合
・役員に占める女性の割合
・男女別の職種又は雇用形態の転換実績
4)賃金
・男女の賃金差異…男性労働者の平均賃金に対する女性労働者の平均賃金割合を%で表示。
「全労働者」、「正規雇用労働者」、「非正規雇用労働者」の3区分で公表が必要。
5)企業認定マーク
・企業認定の有無
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えるぼし認定、えるぼしプラス認定、プラチナえるぼし認定、プラチナえるぼしプラス認定、くるみん認定、くるみんプラス認定、プラチナくるみん認定、プラチナくるみんプラス認定、トライくるみん認定、トライくるみんプラス認定、健康経営優良法人、なでしこ銘柄、ダイバーシティ経営企業100選/新・ダイバーシティ経営企業100選、100選プライム、女性が輝く先進企業表彰 |
※参考)女性の活躍推進企業データベース】
登録対象者と公表基準
女性活躍推進法に基づき、常時雇用する労働者が101人以上の企業には情報公表が義務付けられています。なお、常時雇用する労働者数によって、公表義務のある項目数が異なります。
1)常時雇用する労働者が101人以上の企業
「男女賃金差異」と「女性管理職比率」の必須2項目に加え、任意項目から1項目以上の公表(計3項目以上)が求められます。
2)常時雇用する労働者が301人以上の企業
「男女賃金差異」と「女性管理職比率」の必須項目に加え、「女性労働者に対する職業機会に関する機会の提供」、「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境整備」の任意項目からそれぞれ1項目以上の公表(計4項目以上)が義務付けられています。
<1)101人以上の企業:必須2項目+任意項目から1つ以上>
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必須項目(公表必須) |
任意項目(以下から1つ以上) |
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① 男女賃金差異 A~Cそれぞれの区分で ※平均年間賃金=総賃金/人員数 ② 女性管理職比率 |
女性の活躍機会に関する実績項目 |
<2)301人以上の企業:必須2項目+任意項目から2つ以上>
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必須項目(公表必須) |
任意項目(項目各1つ以上) |
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① 男女賃金差異 A~Cそれぞれの区分で ※平均年間賃金=総賃金/人員数 ②女性管理職比率 ※管理職=「課長級」と「課長級より上位の役職(役員除く)」 |
女性の活躍機会に関する実績項目(1つ以上) |
閲覧者と活用事例
「女性の活躍推進データベース」の閲覧は、求職者・企業・投資家のそれぞれに大きなメリットがあります。
・求職者、労働者(就職・転職活動)
残業時間の平均や有給休暇取得率、女性管理職割合などを客観的な数値で把握できるため、「男女問わず能力に応じて力を発揮できる環境か」「働きやすい職場環境か」を公平に判断できます。
・企業、人事担当者(採用ブランディング・人的資本経営)
自社の立ち位置を業界水準と比較・分析し、人事労務施策に生かすことができます。また、働きやすい職場環境が整っていることを公表することで、求職者にとって「魅力的な企業」として発信でき、優秀な人材の確保につながります。
・投資家、アナリスト(ESG投資・企業評価)
サステナビリティ開示や有価証券報告書で求められる「女性管理職比率」や「男女賃金差異」等のデータを同一基準で横断比較できるため、企業の持続可能性やガバナンスを正確に評価できます。
公表にあたっての算定対象期間
初回の公表タイミングは対象となる事業年度が終了した後、次の事業年度開始後のおおむね3か月以内に公表します。また、その後も原則年に1回以上、最新の数値を公表する必要があります。
※公表タイミングの例
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事業年度の終了 |
対象期間 |
公表期限 |
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2026年6月末に終了 |
2025年7月~2026年6月 |
2026年9月末までに公表 |
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2026年12月末に終了 |
2026年1月~2026年12月 |
2027年3月末までに公表 |
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2027年3月末に終了 |
2026年4月~2027年3月 |
2027年6月末までに公表 |
女性の活躍推進企業データベースへの登録・公表までの手順
情報の登録・公表は、データ入力作業にとどまらず「現状の把握」から「行動計画の策定・届出」、「データの定期更新と見直し」までのプロセスとして進めます。
1)社内の現状把握と課題分析
自社の女性活躍推進や労働環境に関する各種データを集計・分析し、「女性の応募や採用が少ない」、「採用後の離職率が高い」などの自社の課題を抽出します。
| 例)採用者に占める女性割合、男女の平均継続勤務年数差異、有給取得率など |
2)一般事業主行動計画の策定
課題分析をもとに、今後目指す数値目標と具体的な取組内容を記載した「一般事業部主行動計画」を策定します。
| 記載内容)①計画期間 ②数値目標(男性育休取得率80%以上にする等) ③取組内容と実施時期 |
3)社内周知と外部(労働局)への届出
作成した行動計画を社内に周知した上で、管轄の都道府県労働局へ「一般事業主行動計画・変更届」を届け出ます。
4)女性の活躍推進企業データベースへの登録・公表
厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」に企業アカウントを作成し、情報を公表します。
| 公表内容)行動計画、情報公表項目(数値データ) ※データの入力誤りや算出定義(厚生労働省ガイドライン参照)に沿っているかを確認する。 |
5)定期的なデータ更新と進捗管理
一度公表して終わりにせず、運用と見直しを継続します。賃金差異や管理職比率などの実績値は原則年1回以上最新の情報に更新します。また、進捗に応じて行動計画を見直し、「えるぼし認定」などの認定取得を目指すのも効果的です。

男女の賃金差異の算出の注意点
男女の賃金の差異は厚生労働省が定める計算式や対象範囲に厳密に従う必要があります。サステナビリティ開示や有価証券報告書との整合性を取るためにも厚生労働省の公式ガイドラインに沿って集計する必要があります。
なお、男女賃金差異は正規・非正規・すべての労働者の3区分ごとに集計する必要があり、その集計基準・方法についても厚生労働省よりガイドラインが定められているため確認が必要です。
※詳細は過去コラム・厚生労働省「女性活躍推進法に基づく男女賃金差異の情報公表について」参照
両立支援の広場との違い
「女性の活躍推進企業データベース」と比較されるサイトに「両立支援の広場」があげられますが、「何を目的として情報を公開しているか(根拠となる法律の違い)」に明確な差があります。
女性の活躍推進企業データベースは「女性のキャリアや登用」に重点を置いている一方、両立支援の広場では「育児・介護と仕事の両立(休みやすさや制度)」に重点を置いた情報を開示しています。
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項目 |
女性の活躍推進企業データベース |
両立支援の広場 |
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根拠となる法律 |
女性活躍推進法 |
育児・介護休業法 |
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テーマ |
女性の採用、キャリアアップ、管理職登用、男女の賃金差異 |
育児・介護と仕事の両立、育休取得、働きやすい職場環境 |
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企業の目標(行動計画) |
一般事業主行動計画 |
一般事業主行動計画 |
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主な開示データ |
・女性管理職割合 / 役員割合 |
・男性/女性の育児休業取得率 |
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認定マーク |
えるぼし / プラチナえるぼし |
くるみん / プラチナくるみん |
データベースに公表しないとどうなる?
対象企業であるにも関わらず、「女性の活躍推進企業データベース」への情報公表や行動計画の届け出を行わない場合、直接的な罰金などの処罰規定はありません。
しかし、以下のような行政上・経営上のリスクが発生します。
・行政指導および企業名の公表
厚生労働省(都道府県労働局)から状況報告の求めや勧告を受けます(女性活躍推進法第30・31条)。勧告に従わない場合、厚生労働省のウェブサイト等で「法律違反企業」として企業名が公表されます(同法第32条)
また、虚偽の情報を公表した場合も、厚生労働省から勧告がなされ、その勧告に従わなかった場合、企業名公表の対象となりますので、正確な数値を入力する必要があります。
・社会的信用と採用力の低下
求職者や大学等から「女性が働きにくい環境なのではないか」「法令順守意識が低いのではないか」等の疑念を持たれるため、優秀な人材の応募拒否や辞退につながります。
・取引停止・投資対象からの除外
ESG投資を行う機関投資家やサステナビリティ調達を進める大手取引先から評価を下され、取引停止や投資対象外となるリスクを負います。
おわりに
労働力不足が深刻化する中、女性をはじめとする多様な人材が活躍できる環境整備は、企業にとって最重要課題の一つです。法改正により、数値データの公表義務が拡大したことで、社会や市場からの評価軸もより厳格になっています。
「女性の活躍推進企業データベース」で情報を正しく公表することは、単なる法令順守を超えて、求職者・取引先・投資家から「選ばれる企業」になるための協力な武器となります。
しかし、男女賃金差異をはじめとする16項目の情報整理や複雑なデータ算出には多大な労力を要します。
プラットワークスでは、集計作業に課題を抱える企業様に対して「情報公表の集計代行」や、「えるぼし認定」「えるぼしプラス認定」「プラチナえるぼし認定」取得のご支援を行っております。
また、社会保険労務士による適法かつ柔軟な労働環境の制度設計と、オンライン心理カウンセリング「PlaTTalks」を通じた予防的なメンタルヘルスケアを融合させ、女性をはじめとする全世代の従業員が安心して持続的に活躍できる「自律型組織」の構築を支援してまいります。



