もくじ
令和8(2026)年10月1日より、パートタイム・有期雇用労働者に関する法運用およびガイドライン(指針)が改定されます。
今回の改正は、制度の導入段階から「より実効性の高い運用」への移行を目的としています。特に、手当や休暇の支給基準の明確化に加え、労働者への説明義務や雇用管理の透明性の確保が強化されています。
この記事では、企業の人事・労務担当者が抑えておくべき「3つの大きな変更点」と「実務上の留意事項」、そして企業が今すぐ取り組むべきチェックリストを解説します。
パートタイム・有期雇用労働法についての概要説明についてはこちら
→参照記事:パートタイム・有期雇用労働法 令和3年に全面施行へ【2026年追記:同一労働同一賃金ガイドライン拡充】
1.雇入れ時の「労働条件通知書」明示事項が追加【義務化】
雇入れ時に労働者へ交付する「労働条件通知書」の明示事項【昇給の有無/退職手当の有無/賞与の有無/相談窓口】に、新しい項目が追加されます。
追加される明示事項: 「正社員との待遇の相違内容や理由等について、会社に説明を求めることができる」旨の記載
違反時の罰則: 10万円以下の過料
【労働条件通知書への記載例】
「当社の[部署名/担当者職氏名/連絡先]に対し、通常の労働者(正社員)(※)との間の待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができます。」
※「通常の労働者」部分は、自社の呼称(「正社員」「無期雇用フルタイム社員」等)に合わせて記載してください。
改正後の労働条件通知書サンプルはこちらもご参照ください(厚生労働省ホームページより)
https://www.mhlw.go.jp/ content/ 11650000/000815925.pdf
2.「同一労働同一賃金ガイドライン」 改定の具体例(8項目)
不合理な待遇差を判断する指針「同一労働同一賃金ガイドライン」に、これまで明記されていなかった手当や休暇等、新たに8項目に関する具体的基準が追加されました。
| 項目 | 改定ガイドラインの要点 |
| ① 賞与・退職手当 | 功労報償や後払い等の「支給目的」を整理・確認したうえで、職務内容等の違いに応じたバランスが取れていない支給制限は不合理となる可能性あり。 |
|
②無事故手当 |
正社員と業務内容が同一である場合、同一の無事故手当を支給しなければならない。 |
| ③ 家族手当 | 契約更新を繰り返している等、継続勤務が見込まれる場合は正社員と同一支給が必要。 |
| ④ 住宅手当 | 「転居を伴う配置転換の有無」に応じて支給されている場合、同様の転任があるパート・有期社員には正社員と同一支給が必要。 |
| ⑤ 福利厚生施設 | 食堂・保養所等の利用条件(料金・割引率等)で不合理な差を設けてはならない。 |
| ⑥ 病気休職 | 正社員に病気休職中の給与保障がある場合、継続勤務が見込まれるパート・有期社員にも同一の給与保障が必要。 |
| ⑦ 夏期・冬期休暇 | パート・有期社員にも正社員と同一の夏期・冬期休暇を付与しなければならない。 |
| ⑧ 褒賞 | 勤続年数に応じて授与される褒賞(勤続表彰等)は、同一期間勤続したパート・有期社員にも同一の褒賞を付与が必要。 |
運用上の留意点(厚労省留意事項より)
①正社員の待遇引き下げによる格差解消は不可
待遇差を解消する際、正社員の賃金や手当を引き下げる対応(不利益変更)は原則として認められず、トラブルの原因となります。パート・有期社員の待遇を引き上げる方向での見直しが基本となります。
②定年後の継続雇用者(嘱託社員等)の扱い
「定年後の有期雇用だから」という理由だけで一律に低い待遇にすることは認められません。手当ごとの目的・性質に照らして判断されます。
③「正社員の人材確保」だけを理由とする格差の否定
「正社員人材を確保・定着させるため」という抽象的な目的だけでは、不合理な待遇差を正当化する理由としては認められません。
④無期転換後・多様な正社員への適用
有期雇用から「無期雇用パート」や「限定正社員」に転換した社員に対しても、ガイドラインの趣旨を踏まえた均衡処遇の点検が必要です。
3.雇用管理の改善等に関する措置(実務対応のチェック一覧)
今回の見直しでは、雇用管理や労務手続の透明性を高めるための措置も整理されています。企業に求められる対応は以下の通りです。
| 項目 | 企業に求められる対応・実務ポイント | 区分 |
| ① 職業能力開発の適用 | パート・有期社員にも職業能力開発推進の対象となることを認識し、教育訓練の機会等を提供する。 | 適用徹底 |
| ② 公正な評価の反映 | 職務内容や成果・能力を公正に評価し、昇給等に反映させる(共通の賃金表や評価項目の導入推奨)。 | 配慮・推奨 |
| ③ 過半数代表者の選出要件 | 就業規則の作成・変更時に意見を聴くパート・有期労働者の代表は、「管理監督者でないこと」「事業主の意向に基づいた指名等ではなく、適切な投票等で選出すること」を徹底する。 | 手続厳格化 |
| ④ 福利厚生等の便宜供与 | 診療所・保育所・駐車場・各種施設等の利用について、パート・有期社員にも適切な便宜を図る。 | 配慮 |
| ⑤ 正社員転換の推進 | 転換制度の設置に加え、契約更新時の面談等で本人の転換意向を確認・考慮する。 | 配慮・推奨 |
| ⑥ 説明義務の厳格化 | 待遇差等の説明要求を受けた際、口頭のみではなく「資料の交付」または「資料を用いた説明」を基本とする。 | 運用強化 |
| ⑦ 労使対話の促進 | アンケートや対話の場を設け、パート・有期社員の意見を定期的に聴取・反映させる。 | 努力義務 |
| ⑧ 雇用管理情報の公表 | 正社員転換制度の内容や実績について、自社社内通知やWebサイト等で定期的に公表する。 | 推奨 |
まとめ:自社の就業規則・運用の点検を進めましょう
令和3年の全面施行から時間が経過し、実務は単なる「制度の整備」から「実際の運用が基準を満たしているか」を問う精緻運用化のフェーズに入っています。
1.労働条件通知書のフォーマット改定
2.手当・休暇規定の改定
3.説明用資料の準備
特に「家族手当」「住宅手当」「退職金」「休暇」は企業ごとの規定差が出やすいため、早めの現状把握と見直しをおすすめします。
実務の詳細や最新動向については、厚生労働省の特集ページも併せてご確認ください。
→同一労働同一賃金特集ページ~雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保について~
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