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近年、終身雇用や年功序列の機能が弱まっていることや、転職の一般化・副業解禁などで働く人にとって企業への帰属意識より個人のキャリア志向が高まっています。そのような中で、企業の経営者や管理職から「個人の能力を高めることも大事だけど、一人では仕事はできないのでもっとチームワークを高めたい」「できる人が下の人にも教えるとか組織の連携を良くしたい」という声を聞くことは少なくありません。チームビルディング研修を実施したり、社内イベントを行ったりする企業もありますが、それでも思うように組織の協働が進まないというケースも見られます。
その背景には、チームワークを「人間関係」や「意識」の問題として捉えていることがあるかもしれません。もちろん、人間関係やコミュニケーションは重要な要素です。しかし、組織で仕事を進めるうえで、もう一つ重要な視点があります。それが「役割」です。
組織の中では、複数の人がそれぞれの仕事を担いながら成果を生み出しています。誰がどのような役割を担うのかが整理されていない場合、協力しようとしてもどこまでが自分の仕事なのか分からず、結果として連携がうまく機能しないことがあります。
今回は、チームワークというテーマを「役割」という視点から整理し、よりよいチームをつくることができる役割貢献制度の活用方法を解説していきます。
チームワークの難しさの背景には役割の曖昧さがある
チームワークというと「仲の良い組織」「コミュニケーションが活発な組織」といった人間関係の側面が注目されがちです。しかし実際には、チームワークが機能するかどうかは仕事の構造にも大きく影響されます。役割が整理されていない組織では、自分の価値観だけで仕事を進めてしまったり、プロジェクトを組む際に誰がどのくらいのスキルがあるのか・役割を担えるのかが分からず、探り探り進めた結果スタートダッシュがなかなか切れないといったケースがあります。
こうした状況では、協力しようとしても調整が増え、結果として仕事が停滞することがあります。チームワークは人間関係だけで生まれるものではなく、「誰がどの役割を担うのか」という構造の整理も重要な要素と言えるでしょう。

出典:株式会社ヌーラボ「チームワークマネジメント実態調査」を基に作成
人事制度の設計によってチームワークの生まれ方は変わる
このような多様化する社会や組織の中で、『チームワークは組織文化や人間関係によって生まれてくる』という考えももちろん重要な考え方ですが、人事制度の設計によっても大きく影響を受けます。
例えば、職能等級制度では個人の能力が評価の中心となるため、行動の焦点が個人の成長に向きやすくなります。職務等級制度では担当職務が明確になる一方で、職務の範囲を越えた協力が生まれにくい場合があります。役割等級制度では役割単位で責任が整理され比較的チームワークを作りやすいですが、基本的には担当役割の遂行が評価の中心になります。一方、役割貢献制度では組織への貢献を役割として整理し承認するため、他者支援や調整などの協働行動も役割の一部として位置づけることができます。
このように制度の前提が異なることで、チームワークの生まれ方にも違いが生まれるのです。
誰がどの役割を担えるのかが見えるとチームを組みやすい
プロジェクトチームをつくる際、多くの企業では「経験がある人」「手が空いている人」といった基準でメンバーが選ばれることがあります。しかし、組織の中で誰がどの役割を担えるのかが整理されていない場合、プロジェクトの中で役割が重複したり、逆に必要な役割が不足し「プロジェクトを通じて成長してほしい」といった後付けの理由でメンバーが選ばれてしまう、という受け身で進んでいくことがあります。その結果、チームとして十分に機能しないケースも少なくありません。
一方で、実際の組織では役割が理想的に分担されていることの方がむしろ少なく、特に中小企業では一人が複数の役割を担うことも珍しくありません。役割貢献制度では、仕事を「人」ではなく「役割」という単位で整理し、貢献度マトリクスを用いてどの業務領域のどの水準の役割を担える人材がいるのかを可視化します。これにより、役割の重なりや不足を把握しながらメンバーを組み合わせることができるため、お互いの役割を補完しながら機能するプロジェクトチームを構成しやすくなるのです。「自分の仕事はここまで」と線を引く(ジョブ型)のではなく、「自分の役割はここだが、隣の役割のここまではサポートできる」という「重なり(マージン)」をマトリクス上で可視化すること。マトリクスは、給与を決める表だけではなく、誰がどこを守り、誰を助けるかを記した「戦術ボード」として位置付けることができます。
実際に役割を分担する際には、きれいに分けることが難しいことが多いですが、この点は必ずしも問題というわけではなく、その状態をメンバーが把握できることで、役割の重複や不足に対する対処がしやすくなります。

チームワークを「構造」と「関係」の両方でとらえる
チームワークというと、信頼関係や心理的安全性、コミュニケーションといった人間関係の側面が強調されることが多くあります。確かに人間関係の側面は非常に重要なのですが、良質なチームワークはそれだけで成立するものではありません。誰がどの役割を担うのか、どのような目標のもとで仕事を進めるのかといった「構造」が整理されていなければ、協力しようとしても業務の重複や責任の曖昧さが生まれ、ただ仲の良い居心地のいい組織という、いわゆる『ぬるま湯』の組織につながってしまうのです。自分の役割が明確で、かつ他者の役割を正しく認識できているからこそ、安心して意見を言い、背中を預けることができます。「構造」は、『心理的安全性』という関係を支える土台なのです。
つまり、チームワークは「関係」と「構造」の両方によって支えられており、役割分担や業務プロセスといった構造要因と、信頼関係やコミュニケーションといった関係要因の両方をしっかり整えることで、メンバー同士が役割を補完しながら協働しやすくなり、結果としてチームとしての成果に結びつきやすくなるのです。

組織に合った人事制度を実際に機能させるためには、制度設計だけでなく、その運用を支える体制づくりが不可欠です。期待される役割や評価基準、処遇の考え方を明確にし、それらを日常のマネジメントに落とし込む仕組みを整えることで、制度は初めて企業の成長を支える実効性のある仕組みになります。
プラットワークスでは、事業戦略や組織課題に応じた人事制度や株式報酬制度の設計に加え、運用が定着するためのプロセス整備や評価者研修など、実務に密着した支援を提供しています。
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制度構築 - プラットワークス|社会保険労務士法人プラットワークス|東京都 千代田区 大阪市|社労士法人 社労士事務所
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