もくじ
「研修とかOJTとかいろいろ育成にはそれなりに力を入れているんだけど、人が思うように育たないんだよね」
経営者の方とお話をしていると、このような話を聞くことがあります。育成の取り組み自体は増やそうとしている企業も多いですが、現場では「任せられる人が増えない」「結局は一部の人、出来る人に業務が集中してしまう」といった状況が続いているケースも見受けられます。
実際に労働政策研究・研修機構の2025年調査では、企業の約8割以上が「人材育成は生産性向上に効果がある」と回答しており、多くの経営者が育成の重要性を強く認識しています。一方で、育成の成果が実感できない声も大きいのも事実として聞かれます。このギャップは、育成の量や管理職の努力不足が原因ではなく、育成と役割の設計が噛み合っていないことから生じている可能性がありますので、今回はその点について深堀りしていきましょう。
従業員に対して実施する人材育成・能力開発の教育投資が、どういうことに効果があると考えているかを尋ねた。「職場の生産性の向上」については、8割超(84.8%)が「効果がある」または「ある程度効果がある」としている。規模別にみると、規模の大きい企業ほど「効果がある」または「ある程度効果がある」とする割合が高い(引用:労働政策研究・研修機構(JILPT)「企業の人材育成・能力開発に関する調査」)
「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査」(企業調査、労働者調査)』独立行政法人 労働政策研究・研修機構
育成の重要性は理解されているが、成果が見えにくい現実
人材育成の重要性が広く認識されていることが分かる一方で、実際の取り組みを見ると計画的な育成が十分に行われている会社はまだまだ多くありません。同じ調査によると、OFF-JTを実施している企業は約31.6%、自己啓発支援を行っている企業も約29.2%にとどまっています。
また、従業員側の意識を見ると、自己啓発を行わない理由として「行っても会社で評価されない」と回答した人が26.1%という結果になっています。これは自己啓発に限らず人材育成全般にもつながることですが、育成の機会そのもの、というよりも「育成した結果がどのように仕事や評価につながるのか」が見えにくいことが、成長意欲を阻害してしまっているのではないでしょうか。とりあえず会社から言われたから研修に行ったり自分でもやってみたが、その後会社からは何もなく業務にも活かせているのか分からない、そのようなことが往々にしてあります。
育成をしていないわけではないが、成果が見えない。この状態では、育成の取り組みは時間と労力だけかかるコストとして捉えられやすくなってしまい、現場の納得感も得られにくいなってしまいます。
「育てたい人」と「任せたい仕事」がズレる理由
育成が停滞している組織では、「誰を育てたいか」は明確でも、「どの仕事を、どのレベルまで任せられれば育ったと言えるのか」が整理されていないケースが見られます。
その結果どうなるか・・・
・育成しているつもりだが、仕事は任せられない
・仕事は任せたいが、育成が追いついていない
といったズレが生じます。
厚生労働省の調査でも、企業が今後強化すべき人材施策として「育成体系の整備」が最も多く挙げられています(52.9%)。これは、多くの企業がこのズレを課題として認識しているものの、役割と結び付けた人材育成設計まで落とし込めていないということが言えると考えられます。
(引用:人材育成の現状と課題_厚生労働省)
役割が定義されていない育成の限界
役割が曖昧なまま育成を進めると、評価や指導はどうしても上司の経験則や感覚的になったり、好き嫌いで評価が決まってしまうこともあります。「頑張っている」「期待に応えている」といった感情的な判断に寄ってしまい、再現性のある育成が難しくなるのです。
特に中小企業では、計画的なOJTの実施率が企業規模に比例して低下する傾向が見受けられます。これは、育成が現場任せ・上司任せになりやすく、役割基準が共有されていないことの実態を表しているとも言えます。
運よく教えることが上手な上司の下に配属されれば、その人をベンチマークに成長していくことができるのでまだよいですが、本人にとっても「何ができるようになれば一人前なのか」「次にどこを目指せばよいのか」が分からない状態では成長実感を持ちにくくなります。その結果、育成は行われているものの、人が育っている実感が持てない状態が続いてしまい、最悪のケースとして退職に繫がってしまうこともあります。
ちなみに、「既存の役割等級制度でも役割をしっかり定義すれば育成できるのでは」と考える方もいると思いますが、実務上は育成に必要なレベルまで定義されていないケースが多く、しっかりやり切るのは難しいです。
また、役割等級制度では等級ごとの責任範囲や役割の大きさ、期待行動などが定義されますが、主にその役割や行動の結果を評価するという仕組みになっています。このように、既存の人事制度を活用するだけでは人材育成の限界があるのが分かります。
そこで有効なのが役割貢献制度です。人材育成ではその結果に至るまでのプロセスに注目する必要があります。そのプロセスをしっかり可視化し、自分の成長度合いを確かめる方法として「役割 × 深化」の考え方に基づく「役割貢献制度」が役に立ちます。
「役割の拡大 × 深化」で育成を設計する
育成を機能させるためには、役割貢献制度のような能力ではなく役割を軸に設計する視点が必要です。
役割を「拡大(担当できる業務範囲)」と「深化(難易度・品質・再現性)」の二軸で整理すると、「今どこまで任せられるのか」「次にどの役割を担ってもらうのか」が視覚的・具体的に説明することができるようになり、管理者にとっても従業員にとっても納得感の高い取り組みに繋げることができるのです。。
この考え方を活用することで、育成は属人的な経験論ではなく役割の移行プロセスとして整理できるようになります。さらに、長期の役割成長は等級・昇級で承認し、短期の成果や挑戦は賞与で報いると分けることで、育成と評価・処遇が一本の線でつなげることができるようになるのです。

育成と評価を一本の線でつなぎ、人が育つ実感を持てる組織へ
育成しているのに人が育たないと感じる会社の多くは、人が育たないのではなく育つ道筋が見えていないだけです。様々なデータが示す通り、育成の重要性は広く認識されていますが役割と結び付かない育成は成果につながりにくいのが多くの企業で実態としてあります。
まずは、「この仕事は、どこまでできれば安心して任せられるのか」という問いを立て、役割を拡大・深化の視点で業務を棚卸ししてみてください。育成・評価が一本の線でつながり、人が育つ実感を持てる組織へと変わっていくことができますので、不透明な時代だからこそ人材育成をあきらめず荒波を乗り越えていきましょう。
組織に合った人事制度を実際に機能させるためには、制度設計だけでなく、その運用を支える体制づくりが不可欠です。期待される役割や評価基準、処遇の考え方を明確にし、それらを日常のマネジメントに落とし込む仕組みを整えることで、制度は初めて企業の成長を支える実効性のある仕組みになります。
プラットワークスでは、事業戦略や組織課題に応じた人事制度や株式報酬制度の設計に加え、運用が定着するためのプロセス整備や評価者研修など、実務に密着した支援を提供しています。
制度の導入や見直しをご検討の際は、ぜひお声がけください。
制度構築 - プラットワークス|社会保険労務士法人プラットワークス|東京都 千代田区 大阪市|社労士法人 社労士事務所
また、すぐに契約というほどではないが「専門家に相談したい」といった、スポット的なアドバイザリーも弊法人では受けております。企業様のご相談のほか、個人の方からの相談についても、元労働基準監督官である弊法人の代表が相談内容を聞き、ご状況を踏まえつつ個別のアドバイスを行います。
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