1on1を「雑談」から「成長設計」へ変える――役割を軸にした仕組みで実現する、形骸化しない対話とは?

ここ数年、変化が激しく先が読みにくい環境の中で、半数以上の従業員が1on1を経験するといった形で1on1の必要性がどんどん高まり、一気に広まってきました。上司と部下が定期的に1対1で話す時間をつくり、成長やエンゲージメント向上につなげる。コミュニケーションが大事ということで積極的に1on1を推進することは間違っていないことは確かです。
ただ、経営者の方と話していると「1on1を入れたけれど、ほとんど業務相談の場になってしまっている」「管理者が話すことがなく、雑談で終わってしまっている」という声もよく聞きます。現場を見ると、いきなり1on1をやれといわれたが、何をやればいいのか分からず、とりあえず毎月やっているといった感じで形骸化している組織も多いのではないでしょうか。
このとき、つい「上司のコミュニケーション力が足りないのかな」「やり方が悪いのかな」と考えたくなるのですが、実際は上司の問題ではないと考えています。1on1が機能しない会社には、もっと手前にある人事制度や育成の設計のところに共通のつまずきがあります。

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引用:パーソル総合研究所「部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査」

話す軸がないため、雑談や説教で1on1が終わってしまう

1on1が雑談で終わってしまう。あるいは説教のようになってしまう。これは上司が悪いというより構造的にそうなってしまうということがあります。
例えば、よくある原因で挙げられるのが「何を確認する時間なのか」が会社として決まっていないことです。
成長とは何か、今の状態はどこで次に何ができるようになれば前進なのか。ここが定義されていないと上司は話題に困ってしまいます。そうすると、「最近どう?」という雑談になるか、気になっているところを指摘して終わる、という形になりやすいんですね。
つまり、1on1がうまくいかないのは、上司の会話力以前に、成長を測る物差しがないことが大きいです。物差しがないのに「測ってください」と言われても誰でも困ってしまいますよね。
逆に上司が俯瞰的に物事やプロセスを見て適切に助言をしたり、励ましたりすることできると、部下の成長度合いは高くなっていくことはデータからも明らかになっています。

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引用:パーソル総合研究所「部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査」

役割の拡大×深化が1on1の質を変える

では俯瞰的に物事やプロセスを見るにはどうしたらよいのか。ここで効いてくるのが「役割貢献マトリクス」をベースとする「役割貢献制度」です。
役割貢献制度の基本は、人の成長を「役割の拡大」と「役割の深化」で捉えることです。ざっくり言うと、任せられる仕事の範囲が広がっているのか(拡大)、同じ仕事でも難易度や再現性が上がっているのか(深化)という見方です。
この視点があるだけで1on1で話せることが変わります。例えば、

  • 今はどこまで任せられているか
  • 次はどの役割を担ってほしいか
  • そのために、何が足りていないか

こういう話が、自然にできます。これなら雑談にも説教にもなりにくいですし、上司としても全体を俯瞰することができ、部下も「次に何を頑張ればいいのか」を腹落ちしやすくなります。
1on1の目的を気合いや感想の共有ではなく、役割をベースとした取り組みを確認する場として置く。これができると、1on1は現場の負担ではなく育成の実務ツールになっていきます。

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評価ではなくアセスメントを行う「伴走の場」として1on1を位置づける

もう一つ、1on1が機能しない会社でよく起きているのが、「コミュニケーションをとっているつもりが評価と混ざってしまう」問題です。
1on1が評価の場になってしまうと、部下は本音を話しにくくなります。「これを言ったら評価が下がるかも」と思った時点で会話は無難になってしまったり、最悪の場合、部下が自分の意見を言わなくなることにも繋がります。また、上司側も結論ありきで上から指導するだけになってしまうこともあります。
以前のコラムで、「役割の拡大 × 深化」の運用を進めるうえでは、誰がどのように承認をするかが非常に重要であり、承認する際には現状把握とフィードバックを通じて、本人の気づきや行動変容を継続的に行っていく必要があり、このような取り組みはアセスメントであるということをお伝えしました。人事制度にしても1on1にしても、人材育成や成長を促進することが重要な目的の1つです。つまり、今の状態を把握し、できていること、まだ難しいこと、次の成長課題を整理して役割の拡大や深化につなげていく場づくりをしていきましょう。

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1on1を経営的な仕組みとして活用する

1on1がうまくいかない理由は、「上司が下手だから」や「現場が頑張っていないから」ではありません。多くの場合、成長の物差しがなく、役割が言語化されないまま導入されていることが原因です。役割を基軸にして、成長を「拡大×深化」で捉え、1on1を評価ではなくアセスメントの場として位置づける。ここまで設計できて、初めて1on1は効いてきます。1on1は流行の施策というより、実はかなり経営的な仕組みです。そして、制度設計を整えることで1on1は初めて「組織を前に進める対話の場」になっていきますので、ぜひこの機会に一度見直しを検討してみてください。


組織に合った人事制度を実際に機能させるためには、制度設計だけでなく、その運用を支える体制づくりが不可欠です。期待される役割や評価基準、処遇の考え方を明確にし、それらを日常のマネジメントに落とし込む仕組みを整えることで、制度は初めて企業の成長を支える実効性のある仕組みになります。
プラットワークスでは、事業戦略や組織課題に応じた人事制度や株式報酬制度の設計に加え、運用が定着するためのプロセス整備や評価者研修など、実務に密着した支援を提供しています。
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